フェラーリだけじゃない! ケーニッヒが手がけたBMW「6シリーズ」とは?

バブル期の日本では、フェラーリとメルセデス・ベンツのド派手なカスタムで注目を集めていたケーニッヒ・スペシャル。このケーニッヒ・スペシャルが手がけた世界一美しいクーペと呼ばれたBMW「6シリーズ」が存在していた。

狂気のチューナー、ケーニッヒ・スペシャル

 日本でスーパーカーブームが湧き上がった1970年代、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニといったメーカーに注目が集まっていた。

 ケーニッヒ・スペシャルは、そんなエキゾチックカーをメインにチューニングをおこなうことを目的に、1974年ドイツで創業されたチューナーである。

●1986 BMW「635CSi ケーニッヒ・クーペ」

2台のみ作られたとされるBMW「635CSi ケーニッヒ・クーペ」(C)Bonhams 2001-2021
2台のみ作られたとされるBMW「635CSi ケーニッヒ・クーペ」(C)Bonhams 2001-2021

 創業者のウィリー・ケーニッヒは、1961年にレーシングドライバーとしての活動を開始し、BMW「M1」やポルシェ「962C1」などでル・マンのチャンピオンとなり、30年以上にわたってレース活動を続けていた。

 そこで得た経験や知識を活かしたコンプリートカー開発は、たんなるエンジンパフォーマンスの向上だけではなく、エアロダイナミクスという面も融合させたものとなっていたのが特徴だ。

 ケーニッヒのクルマがもつ独特のデザインは、エアロダイナミクスの追求から生まれたものなのである。

 日本でケーニッヒが注目されるようになったのは、1990年代に入ってからだ。ヨーロッパではフェラーリやランボルギーニのチューナーとして知られるケーニッヒだが、日本ではメルセデス・ベンツC126型「500SEC」や、W210型「Eクラス」をベースとしたモデルが、その独特のスタイルから知られるようになっていった。

 あまりにも人気が高くなったケーニッヒであるため、一時はそのデザインをコピーしたボディキットも販売されていたほどだ。

 当然そのようなコピー商品は、たんに意匠を真似ただけのもので、クオリティも低く、それが本家であるケーニッヒの評価を不当におとしめたのは間違いない。

 さらにいえば、当時はチューニング、とくに車高に関しての制限が厳しかったこともあり、正式に輸入審査を受けたコンプリートカーはともかく、市販車をベースに、パーツを輸入してセットし、本家のコンプリートカーと同様のクルマを作るということが難しく、ノーマルとスタイルが違うというだけで違法改造車扱いをされるケースが多かった。

 これは他のチューナーブランドも同じで、こうしたクルマを運転していると、違反をしていないのにクルマを止めさせられ、職務質問を受けるということも散見された。

 ケーニッヒはその独特の、いってしまえば派手なデザインから、目をつけられやすかった、ということもある。同時にそのデザインが、クルマ好きの間では人気だったことも事実だ。

 しかし、ケーニッヒの派手なスタイルは、本来レース由来のものであり、コンプリートカーは高い走行性能を実現していたというのも事実である。

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