なぜ日産 GT-Rやエルグランドは10年以上売り続ける? ご長寿モデルが増加する事情とは
マイチェンでも大幅進化が可能になったのはなぜ?
このように見てくると、車種によって事情の違いはあるものの、基本的にはフルモデルチェンジの限界はいまのところ約10年と考えられます。
衝突安全性能や衝突被害軽減ブレーキを大幅に進化させて性能を高めたり、軽量化を実施するにはフルモデルチェンジが必要で、10年を超えると古さも目立つからです。
とくにいまは、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能の採用などにより、車両重量が増える傾向にあります。
そのままでは環境/燃費性能を悪化させるので、軽量化もセットで実施しなければなりません。プラットフォームの刷新を含めて、フルモデルチェンジのニーズは依然として高いです。
ただし昨今は、膨大なコストを費やしてプラットフォームを刷新するなら、電動化(ハイブリッドやプラグインハイブリッドを含む)への対応が不可欠になりました。
電動化に対応した新しいプラットフォームを使ってフルモデルチェンジするため、車種によってはタイミングを調節しています。
たとえば「マツダ6(旧アテンザ)」は2012年に発売されましたが、2018年にはインパネやタイヤまで刷新する規模の大きなマイナーチェンジを実施しました。
レクサス「IS」も2013年に発売され、2020年に大幅なマイナーチェンジを実施。走行安定性と乗り心地を大幅に向上させています。高コストなフルモデルチェンジするにはタイミングが良くないためです。
マイナーチェンジで済ませた背景には、ボディやプラットフォームに関する解析能力の向上もあります。
「どの部分に手を加えると、いかなる効果が得られるのか」という知見が高まり、以前に比べるとマイナーチェンジで進化する度合いが大きくなったというわけです。
外観などのデザインが安定成長期に入ったことも、フルモデルチェンジの周期が長引いた理由です。
日産「スカイライン」の場合、2代目(発売は1963年)、3代目(1968年)、4代目(1972年)の外観は、フルモデルチェンジの度に急速にカッコ良くなりました。4代目は2代目の9年後に登場しましたが、外観はまったく違うクルマに見えます。
これに比べて、11代目(2001年)、12代目(2006年)、13代目(2013年)は、あまり代り映えがしません。1960年代に比べて2000年以降は、外観デザインの進化が穏やかになったからです。
これは外観を刷新するフルモデルチェンジのニーズが薄れたことも意味します。
さらにミニバンは、車内を広く確保する必要があるため天井の高さやピラー(柱)の角度がある程度決まってしまいます。
トヨタ「アルファード」の初代(2002年)と2代目(2008年)は違いが分かりにいのですが、3代目(2015年)は印象を変えました。主に変化したのはフロントマスクで、ボディの基本デザインはあまり変化していません。
いまはマイナーチェンジによる進化が大きくなり、なおかつデザインは安定成長期に入りました。
さらに環境性能や自動運転といった開発コストも大幅に増えたので、車両開発の投資は相対的に下がりました。
その結果、フルモデルチェンジの周期が長引いています。ただし限界もあり、それは約10年といえるでしょう。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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