トヨタ以外もバブル期は熱中していたのに 国産メーカーがモータースポーツから離れていく訳

2021年2月8日の東京株式市場で、日経平均株価が30年半ぶりとなる2万9000円台を突破しました。バブル最盛期だった1990年の平均株価を超える水準ですが、当時の自動車業界を振り返ると、国産メーカー各社がモータースポーツに積極的だったのに対し、2021年現在ではモータースポーツから距離を置くメーカーが多い状況です。当時と現在で何が変化したのでしょうか。

モータースポーツ活動から距離をとる国産メーカーが増加

 日経平均株価が2万9000円を超え、3万円の背中も見え始めた。新型コロナ禍による景気低迷のなか、バブル最盛期だった1990年の平均株価を超えたのだから驚く。

 当時と今の自動車業界を見ると大きな違いがあります。1990年に発行された自動車専門誌を手に取れば一目瞭然。鋭い人はすぐ解ると思うけれど、その違いはモータースポーツです。

WRCの2021年シーズンに参戦するトヨタ「ヤリスWRC」
WRCの2021年シーズンに参戦するトヨタ「ヤリスWRC」

 例えばF1。当時ホンダは第2期の全盛期! セナが6勝してシリーズチャンピオンを奪取し、ヤマハとスバルも12気筒のF1エンジンを作って参戦中(ヤマハは1990年だけお休み)。それだけじゃなく、いすゞまでF1エンジンを作ろうとしていた。

 なぜそれほどF1人気かといえば、容易にスポンサーが付いたからに他ならない。当時、エプソンやキヤノン、東芝、日本信販、不動産投資で莫大な利益を上げていたレイトンハウス等々、日本企業はこぞってF1のスポンサーになった。

 当時私(国沢光宏)も海外のF1取材に行ったけれど、日本の大手企業の視察多数。大半のチームに日本企業のステッカーがあったほど。そのままバブル景気が続いていたら、F1を席巻するイキオイだった。

 WRCを見るとF1以上に日本のメーカーが参戦しており賑やかでしたね!

 全盛期を迎える直前のトヨタは「セリカ」で名門ランチアとガチ勝負中! マツダも4WDの「ファミリア」でフル参戦。

 三菱は「ギャランVR-4」。スバルも「レガシィ」で本格的なWRC活動を始めていた。そうそう、日産「パルサーGTI-R」が参戦を目指してテストを繰り返していた年です。

 1990年の自動車雑誌をもっとも賑わせていたのがル・マン。

 当時強かった7リッターのジャガー「XJR-12」とポルシェ「962」に対し日産は3.5リッターV型8気筒ターボの「R90CP」を4台投入。予選で1000馬力以上といわれるパワーを出して見事ポールポジションを取った。

 トヨタも3.2リッターV型8気筒ターボの「90C-V」を3台。マツダが4ローターの「767」をエントリーしている。

 なにより驚くのはTOPカテゴリーのグループC/GTPに、日本のチームが12も出ていること! 自動車メディアだけでなく一般紙までこぞってル・マンを取り上げ、当時私も毎年ル・マンの取材に行ってました。

 パドックは日本人ばっかり。ル・マン市街のレストランに行くと、どこでも日本のレース関係者ばっかりだったことを思い出す。

 長い説明になった。文頭に戻る。1990年以来の平均株価ながら、直近の自動車メーカーを見るとモータースポーツ予算をまったく取らなくなっている。

 なぜか? おそらく経営している人達がモータースポーツに興味を持っていないし、明確な費用対効果を評価出来ないためだと思う。

 確かにモータースポーツと販売台数を結びつけることは難しい。けれどファッションの一流ブランドは華やかなショーでデザインを競い、セレブに愛用してもらうのが唯一のブランド作りの手段であるように、自動車もモータースポーツで性能の高さを披露する以外にないと思う。

 それをよく理解しているのがトヨタ(正確には社長)。実際、日本の自動車メーカーではひとり勝ちという状況になっています。

 確かに新型コロナ禍で財政状況が良くないという側面もあると思うけれど、世界的な景気で考えたら悪くなかった2019年時点で見ても、日本の自動車メーカーはモータースポーツと距離を置いていた。

 明るいニュースが皆無に近い三菱自動車や、良いクルマを作っていても“華”がないマツダあたりは、小額の予算でいいからモータースポーツに戻ってきたらいいと思う。

【画像】680馬力で大暴れ! トヨタが開発した新型ハイパーマシン「GR010」を見る(15枚)

【2024年最新】自動車保険満足度ランキングを見る

画像ギャラリー

Writer: 国沢光宏

Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

4件のコメント

  1. そもそもレースカーも普通に販売する車の開発、チームの運営に金がかかる&現行のモータースポーツそのものが時代に合わない&興味がないか興味があっても出場しているメーカー、スポンサーにはほとんど宣伝効果がない。
    個人で趣味でやっても、エントリー料とかにも金がかかるし、ちょっとぶつかれば10万単位で修理費用や部品代の金がかかれば、株価だけが見かけ以上、上がっているだけで(円安が進めばその分は自動的に株価は上がる)、給料が上がらない今の実態経済状況で誰がするものだか…。
    そらぁみんな手を引くわな。

    • もっとも先日、マツダはこれまでIMSAにはDPi(デイトナプロトタイプ・インターナショナル)規定で参加していて、2021年で撤退するが、それまで5年は参加していたし、マツダの声明で
      「マツダは2022年から、MX-5カップと草の根レベルのレースにモータースポーツの取り組みを集中させていく。ワンメイクシリーズであるMX-5カップは、マツダのレース活動の礎となっている。このシリーズと、草の根レベルのレースを支援することで、マツダが誇るモータースポーツの伝統を継承していく」
      と言っているわけで、相当頓珍漢なコラムだわな。

  2. 国沢光宏氏はまずですます調とだである調が混在する癖を何とかして欲しい。何の提案もない内容もひどいがまず目に入っただけでイライラする。編集者はちゃんと校正して修正して欲しい。

  3. 国沢さんが以前書いた記事の「ヤリスを買いに来た客がRAV4を買っていく」という話、好きです

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー