日本で「第2のテスラ」は誕生する? ソニー「ビジョンS」は市販化されるのか
EVの低価格化は今後否応なしに訪れる
ただ、結論からいえば、ボクはビジョンSの市販化の可能性はかなり低いと思っている。
昨年、ソニーの執行役員 川西 泉氏にインタビューした際にも「(ビジョンSを)販売する予定は、いまのところない」と断言していたし、ソニーほどの企業規模になれば、クルマを売ることのリスクがどれほど大きいものか認識していると思うからだ。
クルマは、スペックひとつをとっても命に関わる部分が多く、それを厳重にメンテナンスしていく必要があり、その体制づくりは一朝一夕に実現できるものではない。一時はEV参入を表明したダイソンが中止としたことも、そうした事情を鑑みてのことだろう。
アップルにしろ、参入はおそらくプラットフォームを提案するのみで、“Apple inside”を謳うことはあるかもしれないが、自前で製造・販売することはないと予測する。
では、ソニーがビジョンSを開発し、4台もの試作車を製作して公道まで走らせる理由はなにか。ひとつはソニーが得意とする分野であるイメージセンサーやAVシステムなどを売り込むのに必要な知見を得るためのものに他ならない。
ソニーはイメージセンサー全体でこそ半分以上のシェアを獲得しているが、こと車載に限ればいまだ数%でしかない。サプライヤー同士の競争は激しく、ソニーといえども現状ではそのサプライヤーにパーツを納める「ティア2」の末席にいる状態なのだ。
そこで公道走行を通じてライバル各社を超える知見を高め、話題作りも進めてその存在感を高めていく。これこそ自動車業界でソニーが生き抜く唯一の方法と考えたのに違いない。
それともうひとつ、ソニーは自動運転に向けたソフト開発にも熱心だ。
すでに公道走行したビジョンSには、自動運転の「レベル2+」の技術が搭載され、そのソフトウェアはハンガリーに拠点を置くAImotive製であることがCES2021で公表されている。同社はビジョンSの自動運転技術を高めるためにソニーと協力していくとしており、こうしたノウハウがソニーに蓄積されていく可能性は十分あるだろう。こうしたソフトウェアの販売もまたソニーが目指すひとつの方向性なのかもしれない。
その一方で、EVの低価格化は否応なしに訪れる。
米・GMと上海汽車集団などが出資する上汽GM五菱汽車は2020年7月、2万8800元(約46万円)から買える超格安の小型EVを発売。中国の農村部を中心に爆発的なヒットになり、台数ベースではテスラを超える実績を残すに至った。
仏・シトロエンも小型EV「アミ」を6900ユーロ(約87万円)で投入してヒットモデルとなり、日本でもトヨタが2021年に法人向けに「C+Pod」を発売すると発表してその動向が注目されている。
いずれも性能面でこそ限定的だが、普段使いをEVで賄うことを前提とすれば、そうした需要が一定数あるのは間違いない。
じつはEVの車体コストはバッテリーが3割を占めるといわれ、しかも重い。
航続距離を伸ばすために電池を多く搭載すれば、当然その分だけコストは上がっていき、重量も増していく。これまでEVはバッテリーのコストがかさむが故に高級車にシフトしてきた感があるが、それは重くなった車体を動かすこととなり、いわゆる“電費”という観点で考えれば、決して効率が良いとはいえない。むしろ、現状のバッテリー事情では、こうしたシティコミューター的な使い方をするEVの方が環境にも貢献し、最適との考え方もできるのだ。
となると、ソニーが目指す方向と違うのではないか、との疑問も湧く。しかし、ソニーにとってビジョンSは、知見を高めると同時にイメージリーダーとしての役割も果たす。つまり、それが製品納入のきっかけにつながればいいのだ。
今後はハイブリッド車を含めつつもクルマの電動化の流れは止まらない。自動運転の実現によって車内で楽しむ時間も増えてくる。
そうした流れは、いわばAV機器を手がけてきたソニーにとっては、まさに“我が意を得たり”。自分の得意分野の知見をさらに高め、自動運転を含めたADAS(先進運転支援システム)の進化へとつないでいく方向を、ソニーは見据えているに違いない。
販売網にしろサービス網や補修用性能部品の保有期間の関係があるから基本的に手は出さないだろう。
法的には決まってないが通産省や関係団体の指針では生産終了から10年ぐらいだったはずで、保管すのも馬鹿にならない。
SONYは当然家電だって5~9年ぐらいの取り決めがあるわけで、パーツにしろ人員にしろ販売網、サービス網にしろ準備に金がかかる訳でその予算と儲けを考えると足が出かねない。
まぁ新部品の開発テストベッドや手持ちに保険会社があるから、保険金の算定の基本とかの計算に使う程度だろう。