なぜデカくて重いSUV増える? 電動化で重量増は不回避もSUVブームは続くのか

「SUV×電動化」は従来の常識で捉えてはダメな理由とは

 電動車、とくに電気自動車の大きな課題は、いうまでもなく航続距離(燃費/電費)です。少なくともガソリン車と同等にならなければ、本当の意味での電動化は達成されないでしょう。

 基本的には、大型のバッテリーを搭載されば航続距離を伸ばすことが可能です。

 しかし、重量物であるバッテリーを搭載すればするほど、バッテリー自体の重みで航続距離が減ってしまうというジレンマが起こります。

 これを解消するためには、より小さくより効率の良いバッテリーを開発するか、バッテリー以外の場所で軽量化を図る必要があります。

 前者は自動車メーカー単体の技術で解決することはできません。

 一方、後者については、BMW「i3」の事例があります。欧州の都市間移動をおもな用途として開発されたi3は、片道150kmの航続距離を前提に開発されたとされています。

 当時のバッテリー技術でそれを達成するためには、車体の軽量化が必要不可欠であり、その結果量産車としては世界初のカーボンモノコックシェルを利用したといわれています。

BMWの電気自動車「i3」
BMWの電気自動車「i3」

 このように、車体の軽量化を徹底することで、重量増のデメリットを緩和することはできるでしょう。しかし、この問題の本質は異なる部分にあるようです。

 ある自動車業界関係者は次のように話します。

「誤解を恐れずにいえば、電動車(電気自動車)にとって『軽量化』は不要なのです。正確には、ガソリン車と同じような軽量化は不要という意味です。

 ガソリンエンジンと異なり、電気自動車の動力であるモーターは、発進時から最大のトルクを発生できるという特徴があります。

 出力も自在に調整できるので、重量が増えてもガソリン車のように加速が鈍くなることは現実的にはありません。

 バッテリーの配置にもよりますが、重心を低くすることで背が高いクルマでも走りが安定するという側面もあります。

 このように考えると、SUVのデメリットは打ち消され、むしろ『居住性が高い=バッテリーを多く搭載する』ことができるSUVは電動化と相性が良いといえます。

 もちろん、こうした前提を踏まえたうえで、実際にはあらゆる部分の軽量化をおこないます。ただし、ガソリン車における軽量化とは考え方が少々異なるのです」

※ ※ ※

 ハイブリッド車はもとより、エンジンを搭載しない電気自動車もいまでは決して珍しいものではなくなりました。

 身近な存在になりつつあるからこそ、既存の概念でとらえてしまいがちですが、電動化、とくに電気自動車に関しては、従来のガソリン車(内燃機関車)とは異なる新しい視点で捉えなおすことが必要なようです。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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