車のスピード違反無くなる? 欧州で速度自動抑制「ISA」義務化 日本も導入検討へ 

日本でもISAが導入されるとスピード超過が激減する?

 ISA欧州義務化に関して、オランダに本社がある、世界各国の自動車メーカー純正ナビに地図情報を提供しているTomTom(トムトム)が市場状況を説明する資料を作成し、2020年12月10日に公開しました。

 それによると、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)の調査では、欧州の交通死亡事故の30%は速度超過が原因だといいます。

制限速度を大きく上回って走行するクルマも多く存在(写真はイメージ)
制限速度を大きく上回って走行するクルマも多く存在(写真はイメージ)

 また、アメリカの運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、2018年のアメリカの交通死亡事故車の26%にあたる9378人は、速度超過が起因しているとしています。

 こうしたなか、自動車の衝突安全や予防安全についてメーカー側の意識を高め、またユーザーに対する情報公開をおこなうNCAP(ニュー・カー・アセスメント・プログラム)で、欧州NCAPにはISAが評価項目に組み込まれています。

 日本のJNCAPは、ユーロNCAPを参考に、数年遅れて同じ評価項目を採用していましたが、ISAについて近年中にJNCAPでも採用される可能性があります。

 そうなると、たとえばJNCAPで「夜間の歩行者保護」に関する項目が採用された際、自動車メーカー各社の先進的運転支援システムが一気にグレードアップしたように、ISA機能の標準装備化が一気に進むかもしれません。

 トムトムでは日本市場を含めて、高度な地図データ情報の提供として、自動運転レベル1から2まではADASマップを、また運転の主体がドライバーから自動車のシステムに移るレベル3以上では高精度なHDマップを提供しています。

 さらに、トムトム関連システムをクラウド上で集積する、プローブデータ数は6億以上で、欧州の朝晩ラッシュ時の約2割のクルマからプローブデータを収集しているといいます。

 そのうえで、車載データから取得した走行データを解析するためのさまざまなツールを、自動車メーカーや自動車部品メーカーに提供。

 日本では2020年12月4日に発売された、三菱新型「エクリプスクロスクロス(PHEV含む)」に、トムトムの地図やコネクテッドナビゲーション、リアルタイムトラフィックサービスなどの最新技術をフル装備したインフォテイメントシステムが搭載されています。

※ ※ ※

 近年、自動車の動力性能や走行性能が上がり、制限速度を大きく上回って走るクルマが目立ちます。一般的には、実勢速度と称して交通の流れに乗って走ることが当たり前になっているのが実情です。

 実際に、東京の首都高速が空いている状況で制限速度60kmで走行してみると、実勢速度は時速80km以上に感じます。

 また、東京湾アクアラインなどでは、制限速度80kmに対して、追い越し車線の実勢速度が極めて高いという印象を持っている人も多いでしょう。

 こうしたなかで、日本でISA採用が増えることによって、重大事故が減少することが期待されます。

 ただ、速度抑制が強まれば、高性能なクルマを楽しむ機会は減り、そうしたクルマを楽しむのはサーキットなどの安全性を十分に担保したクローズドエリアだけになってしまう可能性があります。

 近年、欧米で進む、ハイパフォーマンスカーメーカーが手掛けている、自社ブランドのユーザー専用のプライベートサーキットは、これからの世の中の流れを考えたうえでの新たな戦略なのかもしれません。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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コメント

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5件のコメント

  1. 無理だろ!流れに乗ると言うアホ単位があるからね〜 他にタラタラ、チンチラ、ノロノロ、モタモタ
    飲んだら乗るな!飲むなら乗るな!高齢者免許返納!てはなく運転不適切を車に認識させるがカギですね。車検証と免許の情報を共有すれば準中型免許じゃ中型のエンジンかからないとか?マイナンバー制度を免許に被せるなら朝飯前です。

  2. こういう仕組み導入する話だと
    大概に
    死亡事故の3割が速度超過だから速度規制すれば安全
    というおかしな考えを吹聴するんだよな、
    事故の相対速度が大きければ大きいほど衝突時の衝撃は乗数倍で大きくなるのだから
    速度が出ているほど死亡に至る危険は高まるのは物理法則上で見ても当たり前だからね、
    速度超過が死亡事故の主要因になるのは統計上当然多くなる事は当たり前で、
    速度のせいにするのはスケープゴートだと思うのです。
    死亡事故の対策は走行速度そのものではなく速度の高い衝突を如何に未然に回避し防げるか、
    変な言い方で言えば「当たらなければどうという事も無い」とも言えるのさ
    根本的に乗り物は速度出してなんぼの物だし
    極論で言えば走るなと言ってる様な物だから
    安易に速度抑制すれば良いなんて考え方は
    死亡事故はある程度減らせるにしても事故件数そのものは減らせるとは限らないと思われるし
    車の存在意義を否定してる様に思えるから
    こんなISAみたいなものが義務化されれば
    車に対する所有意識は間違いなく下がり
    若者の自動車離れは一層進むだろうね。
    ある意味今日の安全装置やドラレコの普及は
    無謀で危険な運転は減ったものの、自覚してない無知な危なっかしい運転は減ってない様に見て取れる。
    機械頼みの速度抑制に頼るのではなく
    第一に安全に運転するという運転者への意識教育をおざなりにしてはダメ
    何が危険であるかを学び理解して実践しなければ交通安全は成しえないと思う。
    運転者の安全意識や運転スキルは落ちる一方の堕落した未来を危惧してやまない。

  3. まぁ警察も稼ぐところが減るから賛成しないのでは?

  4. だったら最初からメーカー出荷時点で120-130のリミッターつければ現代技術なら極めて低コストで少なくとも高速上の機動隊やらオービスやらは不要な物になるだろう。何故つけないのか?反則金や罰金がほしいからだろう?

  5. ISA義務化最高、素晴らしすぎる
    スピード出したい人はサーキットに行くようにすればみんな安全かつサーキット場の雇用もできるしみんなハッピーやん

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