ホンダに続きアウディやBMWも!? ドイツ勢もモータースポーツから撤退する事情とは
モータースポーツ三種の神器は通用しないのか?
さらに一歩踏み込んで考えると、アウディやBMWがEVのフォーミュラEから撤退したという事実は、自動車産業全体に大きなインパクトを与えたといえます。
なぜならば、電動化シフトという名目だけでは、モータースポーツ存続の理由付けにはならないからです。
米・カリフォルニア州では2020年9月に「2035年までにインターナルコンバッションエンジン(内燃機関)の新車販売禁止」を目指すとの発表がありました。
また、日本でも菅政権での「2050年カーボンニュートラル」の一環として、「2030年前半(または半ば)にガソリン車販売禁止」の最終調整に入ったという報道が12月に入ってから相次いでいます。
こうした量産車の電動化が、自動車メーカーにとって必須アイテムとなっても、その技術開発やマーケティング活動として、資金面でフォーミュラE参戦が見合わないという判断をアウディもBMWも下したことになります。
これからのモータースポーツはどうなっていくのでしょうか。
そもそもモータースポーツは欧州の富裕層の娯楽として始まり、1960年代に入ってからは世界的なモータリゼーションの高まりのなかで、技術研究のための「走る実験室」といわれました。
また、新車販売に直結する宣伝活動として、「走る広告塔」という側面もあります。
1970年代半ば以降は、自動車以外の産業からスポンサー活動も盛んになり、たとえばアメリカのNASCARでは「レース・オン・サンデー、セル・オン・マンデー(日曜にレース、その翌日月曜日に実売につながる)」というキャッチコピーが生まれています。
さらには、自動車メーカー技術者の「究極への体験の場」として活用されてきました。
それが近年になり、モータースポーツに直結する新型車は高額、または限定車として一部のファン向けという色合いが濃くなり、メーカーのブランドイメージ全体を維持するための費用対効果を高めることが難しくなってきました。
一方で、Eスポーツなどバーチャルレースは、新型コロナ禍でリアルレース活動が中断されたことでさらに注目が集まっています。
今後のモータースポーツは、国や地域、ターゲットユーザーをしっかりと絞り込んだ上で、リアルとバーチャルを組み合わせた形へと大きくシフトしていく可能性が高まってきました。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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