水没車と知らず購入、取り消しは可能? 豪雨多発で20万台も水害に 虚偽販売の対処方法とは

冠水車と知らずに契約した場合、取り消しは可能?

 これらの冠水車は業者間取引(オートオークション)においてもおおむね同様の基準が定められており、冠水車であることが判明した場合は、その内容を表示して取引することが定められていれます。

 とはいえ、海水やドロをかぶっていない、大雨だけによる冠水の場合、プロでも見抜くことが難しい場合があります。

 愛車が2018年の台風で冠水の被害にあったユーザーは以下のように話してくれました。

「すぐにきれいに水洗いをして乾燥させたらエンジンも普通に掛かって何の問題もなく走行もできました。

 ですが、数か月後に電装系の故障が頻繁に起こるようになったので、ディーラーに持って行ったところ、保証期間内だったこともあって無償で修理をしてくれました」

 冠水が原因かどうかはわかりませんが、ディーラーのサービス担当者からは何もいわれなかったそうです。

 では、冠水したことを隠して販売したクルマを購入後、冠水したことが判明した場合はキャンセルができるのでしょうか。

豪雨により冠水車してしまった車両(イメージ)
豪雨により冠水車してしまった車両(イメージ)

 全国約1万5000社の自動車販売業者(新車・中古車)が会員となっている一般社団法人「自動車公正取引協議会」は、2020年12月4日に「冠水車に関するトラブル増加」というお知らせを発行しました。

 そこには「冠水車と知らずに契約した場合、契約の取り消しを求めることができる」と記されています。

 1.中古車販売の際「冠水車」に関する虚偽等の表示は、不当表示
 2.「冠水車」は商品価値の下落が見込まれ、品質上も重大な問題が発生する可能性が非常に高い

「冠水車」ではないなどの虚偽の表示・説明をした場合はもちろん、「冠水車」であることを表示・説明しなかった場合も不当表示に該当し、公正競争規約に違反することになり、景品表示法上も問題になる。

 3.「冠水車」であることが判明した場合、契約の取消しを求めることができる

 これらにおいて、契約の取り消しができる法的な根拠は以下のとおりです。

 ●「冠水車」である旨の表示・説明がなかったため「冠水車」であることを知らずに契約した消費者は、錯誤による契約の取消しを求めることができる。(民法95条)

 ●「冠水車」であることを販売店が故意に隠していたときは、詐欺による契約の取消しを求めることができる。(民法96条)

 ●表示や説明がなかったことで消費者が「冠水車」ではないと誤認をして契約を結んだ場合、当該契約の取消しを求めることができる。(消費者契約法4条)

※ ※ ※

 では、販売店がクルマを販売する時点で冠水車と気付いてなかった場合はどうなるのでしょうか。自動車公正取引協議会に聞いてみました。

「販売した会社が冠水車であることを知っていたかどうかは関係ありません。

 実際、冠水の仕方によっても症状に違いが出てきます。塩水か真水か? ボディのどこから浸水したのか? 正面、右、左、後部…によっても変わります。真水などはクリーニングすると、痕跡を見抜くのが難しい場合もあります。

 本当に冠水車だと気づかず仕入れて販売した例もあるかもしれませんが、その場合でも冠水車であることが判明すれば契約取り消しの対象となります。

 中古車は価格や品質などを適正に表示している『公取協会員販売店』で購入されることをお勧めします。

 『車両状態評価書』などによって車両の状態や品質を表示・交付している販売店ならより安心です」

 少しでも疑問が出てくればどんなことでも販売店に確認して欲しいといいます。

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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