なぜスバルが“渋谷”で「アイサイト」を開発? スバルが描く「AI×自動運転」の未来像とは
次期アイサイトは2020年代後半登場か? AI技術をどう活用?
齋藤氏は、「スバルラボ発のアルゴリズムが世界の常識を変える」と言い切ります。このアルゴリズムとは、一体何なのでしょうか。
IT業界ではよく出てくる用語で、また最近は自動車業界では自動運転分野で耳にする機会が増えました。
アルゴリズムは、広い意味では技術的な法則であり、狭い意味ではソフトウエアプログラムという解釈だと思います。
それをアイサイトに当てはめて、動画を使ったプレゼンテーションでは「これまでのアイサイト」と「これからのアイサイト」を比較してみせました。
ちなみに、「これまでのアイサイト」とは、スバルが次世代アイサイト(及びアイサイトX)と呼ぶ第四世代アイサイトのことで、2020年10月に発表された新型「レヴォーグ」に搭載されたものも含まれます。
「これまでのアイサイト」では、人間の目の原理を応用して、ふたつのカメラ(ステレオカメラ)によって、クルマ前方の視界を三次元として認識しています。
ただし、たとえば雪道や轍(わだち)など、障害物ではありませんが、人はそれらの走行状態を予測して、避けたり、またはそのまま通過したりと、自身の経験に基づいて判断をします。
「これまでのアイサイト」は、視界のなかの位置関係に対する精度は高いのですが、理解力・解析力・判断力という分野は未開拓の状況です。
この領域について、「これからのアイサイト」では機械学習などAI(人工知能)の技術を活用するのです。
齋藤氏は「クルマや人、白線だけではく、あらゆる障害物、走行領域、路面標示なども検出し、クルマの走行経路なども推測することで、あらゆる危険に対応するのが“これからのアイサイト”」だと説明します。
では、「これからのアイサイト」を搭載したクルマは、いつ登場するのでしょうか。
今回スバルが提示した資料のなかでは、「2020年代後半 ステレオカメラの認識能力+AI判断能力」という表記がありました。
また、スバルは会社全体として「2030年 死亡交通事故ゼロへ」という大きな目標を掲げており、アイサイトの高度化だけではなく、事故発生時の先進事故自動通報、さらに衝突安全に対する継続的な強化を進めるとしています。
そのうえで、スバルラボ所長、先進安全設計担当部長、そして自動運転PGM(プロジェクト・ゼネラル・マネージャー)である“ミスターアイサイト”こと柴田英司氏は、次にように話しました。
「(これからのアイサイトについて)2020年代後半までの商品開発ロードマップはまだ具体的には描けていません。2030年死亡事故ゼロはどういう定義なのか、そうした詳細を話す時期を決めていきたいと思います」
※ ※ ※
スバルが1989年にステレオカメラの開発をスタートから、今年(2020年)で31年目。また、アイサイトの前身である、ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)量産化からは21年目となります。
スバルの「これからのアイサイト」研究開発が、渋谷発でいま始まります。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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