なぜジムニー人気続く? 10代女子「ゴツくて可愛い」 80年代ブームが背景にあり

かつて衰退した「四駆ブーム」。なぜそれを受け継ぐジムニーは生き残るのか。

 前出の河野さんも「大型オフロード4WD独特の雰囲気」によって、四駆ブームは衰退したと唱えます。

「1980年代から1990年代にかけての四駆ブームは、バブルの追い風もあって完全な“イケイケ状態”になってしまいました。

 多くのクルマが高くリフトアップし、ガッシリしたグリルガードを付けるのがスタンダード。

 それも、必要とされる機能に裏付けされるものだったのですが、世の中が“あんなクルマは街ではオーバースペックだ、危ない”といい出し始めた瞬間から、オフロード4WD=悪というイメージになってしまいました。

 それでもジムニーが残り続けているのは、街にも自然にも溶けむようなフレンドリーな雰囲気からでしょう」

プロからも絶大な人気を誇るスズキ「ジムニー」。
プロからも絶大な人気を誇るスズキ「ジムニー」。

 コロナ禍によって、新車販売が打撃を受けている反面、衰えないジムニーの健闘ぶりは驚きに値します。

 そこには、多くのコロナを恐れて一人で出かける人が多くなったという世情があります。

 そのムーブメントのひとつが、「ソロキャンプ」。家族や友人たちとキャンプに行くのであれば、その装備を積むのに大きなスペースユーティリティを持ったクルマが必要です。

 しかし、ソロでならジムニーの車内空間で十分。さらに人里から離れた山中を目指すには、優れた悪路走破性を持ち、コンパクトなジムニーは実に実用的な愛車というわけです。現行型であれば、車中泊をするのも容易です。 

 一方で、この小回りの利き使いやすいボディサイズが、ジムニーの弱点にもなっていると、前出の谷口さんはいいます。

「ジムニーはスペースユーティリティが小さいのですが、ルーフラックやキャリア、アタッチメントを活用することで、簡単に改善することができます。

 しかし、後席へのアプローチだけはドアの枚数が増えないと改善できません。小さい子供やシルバーエイジには、後席にアプローチするのは難しく、ほとんどのユーザーが2シーターで使っているのが実情です。

 お客さんのなかにも“5ドアはいつ出るのでしょうか?”という問い合わせがあり、とくにファミリー層ではかなりいますね。もちろん、5ドアモデルが出れば、ファミリー層だけでなく、より大きなアイテムを積みたいアウトドア派やプロフェッショナルも購入するはずです」

※ ※ ※

 2022年に最初のマイナーチェンジイヤーを迎えると思われるジムニーですが、燃調プログラムやブレーキLSDトラクションコントロールの改善など、ユーザーが求める改良点は少なくありません。

 そして、多人数乗車もユーザーのニーズのひとつです。すでにジムニーシエラ5ドアの国内販売が決まっているとされていますが、マルチスズキ・インド工場での生産開始が大幅に遅れている状況です。

 現在はジムニーとジムニーシエラしか注文できない状態ですが、仮にシエラ5ドアの販売が開始されれば、ユーザーがショート、ロングでほどよく分散される可能性もあります。

 ユーザーニーズが満たされるだけでなく、納期改善につながるともいえ、5ドアの販売いかんでは、シリーズ累計の年間販売台数が5万台を突破するかもしれません。

 登録台数から鑑みると、スズキも生産体制を強化しているようですが、商品力の強化も必要な時期がそろそろ訪れているのも確かです。

 実は2020年は、初代モデルが1970年に登場してから50周年目にあたる記念イヤー。しかし、さまざまな状況ゆえに記念モデルも新バリエーションも登場することのない寂しい年になってしまいました。

 絶好調のジムニーですが、その人気を盤石にするためにも、そろそろ心躍るニュースを聞きたいところです。

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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