最新パワーステアリングで乗り味激変! ショーワがこだわる2つのEPSに注目!

ホンダ系シャシパーツ・サプライヤーの「ショーワ」は、電動パワーステアリング(EPS)を手掛けています。最新のEPSを装着した車両は、乗り心地が明らかに変わるようです。どのような乗り味だったのでしょうか。

ホンダ系サプライヤー「ショーワ」の技術発表は最初で最後?

 ホンダ系のシャシパーツ・サプライヤーで知られる株式会社ショーワが自社の技術を公開し、プロトタイプの実車でリアルなテストドライブができるイベントを開催しました。

 ショーワの関野専務取締役は「最初で最後のイベントとなりそうです」と語ったのですが、その訳はショーワとホンダ系のサプライヤー2社が、日立オートモーティブと経営統合することが決まっているからです。

DPA-EPSを装着したマツダ「CX-5」でテスト走行
DPA-EPSを装着したマツダ「CX-5」でテスト走行

 統合後の社名は「日立アステモ」となり、日立が66.6%、ホンダが33.4%の株式を保有します。

 トヨタを中心とするデンソーやアイシンなどのメガサプライヤーに対抗できる東地区のメガサプライヤーを目指すのが、ひとつの目的。健全な競争が狙いです。

 しかし、すでに日産系のシャシメーカーが日立オートモーティブに統合されているので、ショーワのシャシ技術が、新会社のなかでどのようにマネージされるのかは不明です。

 その意味でも、技術の足跡をしっかりと残しておきたいという、ショーワの狙いもありそうです。

 前出の関野専務は、本田技術研究所時代はアキュラの最高級車(日本では「レジェンド」)の開発を指揮していたエンジニアですが、ホンダから関連企業のショーワに転出していました。

 ショーワは、ダンパーや電動パワーステアリング(EPS)を主に開発製造する、シャシまわりを専門とするサプライヤーで、ホンダだけではなく多くの自動車メーカーに部品を納めています。

 技術の頂点として知られるF1にもショーワのダンパーが採用されていたこともあるし、二輪のモトクロスではその性能が高く評価されています。

 今回は二輪と四輪に分けてイベントが開催されましたが、もちろん私(清水和夫)は四輪のイベントに参加しました。

 栃木県塩谷町にあるショーワのテストコースは、鬼怒川に沿って作られた最新のコースで、シャシ技術を鍛えるには十分な機能を誇っています。

 今回紹介された技術は大きく分けてダンパーと電動パワーステアリング。ハードや制御も含めて、ショーワが開発中の次世代技術がほとんど公開されました。

 走りに直結するサスペンションやステアリングの新技術が公開されるのは興味が湧きます。果たしてどのような技術なのでしょうか。今回は、パワーステアリングについてレポートします。

 自動運転時代には電動パワーステアリング(EPS)は欠かせない技術ですが、人が運転するクルマでも、EPSはクルマのキャクターや運動性能に大きく影響します。

 世界でいち早くEPSに取り組んだのはホンダですが、当時のEPSは手応えが乏しく、高速道路ではタイヤがどこを向いているのかわからなかったのです。

 それまでの油圧パワーステアリングや、初代「NSX」のようにパワーアシストがない、昔ながらのステアリングから比べると、初期のEPSは不安になったものです。

 もちろんそのときの技術はショーワ製でしたが、今回テストしてみると、「半沢直樹の倍返しだ!」と思うほど、最新のEPSはしっかりとした手応えでした。

 その技術はふたつあります。そのひとつが、デュアル・ピニオン・アシスト型(DPA-EPS)です。

 従来のコラムアシスト式では、ドライバーの操舵がタイヤに伝わりにくいというデメリットがありましたが、DPA-EPSでは燃費向上とドライバーにとって安心感のあるステアリングの手応えが可能となりました。

 DPA-EPSを理解するには、ハンドルを操舵する力をアシストするモーターをどこに配置するのかという課題があります。

 従来はコラムやピニオンにモーターを配置する方式が一般的で、ハンドルに繋がるシャフトを直接モーターでアシストします。

 構造がシンプルでコストも安いのですが、モーターの振動がハンドルに伝わることもあり、ドライバーが操作するハンドル操作とタイヤの動きがリニアではないという問題がありました。

 また、ハンドルは軽いが手応えが甘く、タイヤがどっちを向いているのか分からないという不満もあったのです。

 一方でラックギアをモーターでアシストするタイプは、ドライバビリティが高く、ドライバーも満足できるEPSですが、中空軸を持つ特殊なモーターを使うので、コストの壁が存在していました。

 ドライバビリティとコストの課題をクリアすると期待されるのが、DPA-EPSです。ステアリングラックに2か所のピニオンを設け、ひとつは従来通りにハンドル軸に繋がり、もうひとつはモーターを接続しているのが構造上の特徴。

 モーターをハンドルにつながる軸から離すことで、振動面でも有利で、コストの壁もクリアできます。もちろんチューニングの自由度も高まっているから、色々なクルマの個性を作り出すことが可能となりました。

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