新型レヴォーグで勢いに乗るスバル なぜ一斉に受注終了? 燃費規制にまつわる厳しい事情とは

北米一本足打法のツケ? 今後のスバルはどうなる?

 自動車の歴史は規制対応の歴史でもあり、それはスバル以外のメーカーも同様です。

 一方で、CAFE規制が導入されること自体は以前から決定していたものであるにもかかわらず、なぜスバルがこれほどまでに急いで対応をしているのでしょうか。

スバルとトヨタが共同開発するバッテリーEV「BEVコンセプト」
スバルとトヨタが共同開発するバッテリーEV「BEVコンセプト」

 それは、2010年代以降スバルが採用してきた「北米一本足打法」の戦略があります。2019年のスバルの世界販売台数は104万1712台ですが、そのうち北米では70万117台を販売しています。日本国内の販売台数は13万1261台と、北米の20%程度しかありません。

 そして、北米は日本よりも燃費基準が緩やかな地域です。また、スバルが強いとされるアメリカ中西部では、電動化のニーズもそれほど高くありません。

 つまり、スバルは北米での販売を優先させたため、相対的に環境規制への対応が遅れたと見ることができます。

 そこで新規開発のCB型エンジンに期待がかかるわけですが、じつはこのエンジンそのものは決して圧倒的な燃費性能を持っているわけではありません。

 実際、このエンジンを搭載した新型レヴォーグのカタログ燃費は、WLTCモードで13.7km/L(17インチ車)と、従来型から改善しているとはいえ、決して低燃費とはいえません。

 このように考えると、新型レヴォーグを投入したからといって、CAFE規制の基準をクリアできるかどうか定かではありません。おそらく、難しいでしょう。

 燃費規制を主導する国土交通省と経済産業省は「未達成の製造事業者等には、相当程度の燃費の改善をおこなう必要がある場合、勧告、公表、命令、罰則(100万円以下)の措置がとられる可能性がある」としています。

 2019年の売上高が3兆円を超えるスバルにとって、せいぜい100万円程度の罰金は痛くもかゆくもないでしょう。しかし、お金で解決するのは得策ではありません。

 上述の通り、環境対応は国家の至上命題であり、国民全体が目指していくべき方向です。

 もしその方向に従わないのであれば、極端な例ですが、国土交通省は車両認可をおこなわない、つまりそもそも新車を販売させないということもできてしまうのです。

 そのように考えると、CAFE規制をクリアできるかどうかよりも、それに向けて努力しているという姿勢を見せることが先決だと考えたのかもしれません。

 しかし、燃費基準は年を追うごとに厳しくなり、2030年には25.4km/Lの企業間平均燃費を達成することが求められます。

 燃費向上技術も年々進歩しているとはいえ、既存のガソリンエンジンのみで達成することはかなり難しく、遅かれ早かれ電動化が急務です。

 すでに北米では、クロスオーバーSUVの「クロストレックハイブリッド(日本名:XV)」というPHEVモデルを販売しています。

 また2020年1月にスバルは、「2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車+ハイブリッド車にする」ことと「2030年代前半には生産・販売する全てのスバル車に電動技術を搭載する」と発表。さらには2020年代に投入予定のバッテリーEVのSUVコンセプト(トヨタとの共同開発)を公開するなど、準備を進めている段階です。

 今後は、スバルは新型エンジンをベースにしたハイブリッド、もしくはプラグインハイブリッド(PHEV)を発売することが予想されますが、いまはそれまでの時間稼ぎのタイミングと見ることもできるでしょう。

※ ※ ※

 もし主力市場である北米の燃費規制が急速に厳格化するなどして、スバルの燃費対応が間に合わなかった場合はどうなるでしょうか。

 そうなると、エコカーを多く販売しているより大手のメーカーに吸収されるしかないでしょう。たとえば、すでに資本関係があり、世界でもっとも多くのハイブリッドを販売しているあのメーカーかもしれません。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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