ランボルギーニ「ウラカンGT3」を中谷明彦氏が富士全開ガチアタック!
「レース参戦したい!」中谷塾長絶賛のウラカンGT3の走りとは?
実際、車両重量が1300kgあまりであるのに対し、最大出力は610psを超えるスーパーカーだ。電子制御がなければ我々プロドライバーでも扱うのは容易ではない筈だ。
だがABS+TCでタイヤスリップをコントロールすることで、アマチュアドライバーでもアクセル全開でスピンすることなくサーキットを攻められる。電子制御の効果の偉大さを改めて実感させられるのである。
●「ABS+TC」で、アマチュアドライバーでも安心
ABS+TCはステアリング上のスイッチにより「0」から「9」(確認したのは「9」までだが、その先もあるかもしれない)のレベルに走りながらでも設定変更できる。今回はウェット路面を用心してABSもTCも「8」を選択し安全性を高めて走行開始する。
路面は完全ウェット状態だったが、マシン挙動は極めて安定し安心感が高く快適だ。タイヤはピレリ社のPゼロ・コルサのレインタイヤで、前後とも325/18インチと極太サイズを履く。スーパートロフェオは前305/18、後315/18と一回り細く、GT3の方が高いグリップレベルを与えていることがわかる。
ストレートをアクセル全開で駆け抜けると6速で8000回転以上回る。速度計は275km/hを表示。ウラカンは市販車のナンバー付車でも「ペルフォルマンテ」なら290km/hを表示するが、そこは速度計の誤差があるのだろう。
ただ市販車のペルフォルマンテはAWDであり、優れたトラクション性能を持っていてGT3マシンに決して大きく引けを取らない高性能を元々持たされているのだ。
GT3カテゴリーは通常レース時にはBOP(バランスオブパフォーマンス)と呼ばれる性能調整が実施され、エアリストリクターが吸気口に装着されて出力が制限されるのだが、本車両は素の状態。つまり最大パワーが引き出されている。
1コーナー目がけてブレーキングを開始すると、しっかりした制動Gが発生しみるみる減速する。GT3カテゴリーはカーボンブレーキが禁止されているのでブレンボ社製キャリパーにスチール製のディスクローターを装着しているが、それでもクーリング性能に優れていて、思い切り踏み続けてもペダルストロークは安定し確実に減速できるのが強みだ。
試しに安全な場所で思い切り強くブレーキを踏み込んだが、ABSの介入はほとんどなく、タイヤグリップに相当なゆとりがある。おそらくレースラップでグリップダウンしてくるとABSの助けが効果を発揮することになるのだろう。
ABSがなければ、ロックアップ一発でタイヤがダメになることもあるほど、ブレーキ自体の効きは強力なのだ。一方TCは「8」でもタイヤスリップを許容している。
アクセルを急激に踏み込めばリアが容易にリバースする。そのまま踏み込んでいればTCが介入して過剰なホイールスピンは抑制するが、滑る度合いは大きくカウンターステアでコントロールしなければならない。そこは絶対安全を重視する市販車のTCコントロール介入とは大きく異なるところだった。
2日目はドライコンディションで走り込んだ。ABS制御は「2」、TC「3」で走行するとレースラップとして安定した走行が可能だ。路面の予期せぬグリップ変化には最終的に電子制御介入がおこなわれるので、タイヤを傷めず長時間走行できた。耐久レースなどでは効果が期待できる。
今回、特別にウェットのジムカーナ走行テストもおこなえた。レーシングカーでジムカーナ走行をおこなうのは滅多にない貴重なチャンスである。路面はウェットでタイヤはスリックを装着。
アクセルほんのひと踏みでマシンのテールが大きく流れ、カウンターステアを当てても収まらないほど。コース上なら簡単にスピンしているところだ。ジムカーナコースならスピンしても安全で、スライドコントロールの難しさを知ることができる。
TCを最大限介入させてもリアのスライドは抑えきれない。GT3のTCは安全性よりも速さの追求をテーマにプログラムされていることがより明確になったのだ。
さまざまな路面とステージでウラカンGT3を走らせ、次は是非このマシンで実際にレースを走ってみたい! という意識が高まった。その機会が来る事を願いつつ今回は筆を置くこととしよう。
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