今さら聞けない「カーボンパーツ」って、どうして高価でスポーティなイメージなのか?
スーパーカーやスポーツカーでは、当たり前に使われるようになったカーボンファイバー。カーボンファイバーはレーシーな演出をするためには必須アイテムとなった現在だが、本当は軽量化のためにはなくてはならない部材である。そこで、ひとことでカーボンパーツと呼ばれる「CFRP」の基礎知識を解説する。
カーボンパーツのウェットとドライの違いとは?
強くて軽い、というイメージがあり、実際、引っ張り強度に優れていることから、航空機やレーシングカーなどに多用されているカーボンを素材にして成型された部材の(CFRP、カーボン・ファイバー・リーンフォースド・プラスチック)。一般的にカーボンパーツと呼ばれるが、その製法はさまざまだ。
クルマ好きの人なら、ウェットカーボンとドライカーボンという言葉を聞いたことがあるだろう。まずはその違いから見ていこう。
ウェットカーボンというのは、炭素繊維を折り込んだシートを、樹脂を利用して成型していくものだ。その製造方法は、ガラス繊維で構成されるシートを、樹脂を使って型に貼っていくことで成型する、GFRP(グラスファイバー・リーンフォースド・プラスチック)とほぼ同じとなる。
ただし、GFRPの場合には、シートに含まれているガラス繊維が無秩序に組み合わされているため、そのシートを重ね貼りするとき向きを考慮する必要がないが、CFRPの場合には、シートを重ねるときに角度を考えながら貼っていく必要がある。
なぜなら、CFRPではカーボン繊維をある程度束ねて織り込んだシートを使うためだ。
カーボンシートというのは、1本1本はごく細いカーボン繊維をある程度束ね、縦横に織り込んでつくられている。たとえば3000本を束にし、それを織り込んだものを3K、6000本束にして織り込んだ6K、1万2000本を織り込んだ12Kなど呼ばれる。これによって、シート自体の強度が違ってくるのだ。
さらには、カーボン繊維の織りかたも、繊維の束を交互に織っていく平織りや、1本飛ばしで織っていく綾織りがあり、これによっても強度や見た目が違ってくる。
そのようなシートを重ねるとき、同じ向きで重ねてしまうと、ある方向の引っ張り強度は強くなっても、別の方向では弱くなるということが起こり得る。そこで、必要とされる部材の形状に合わせて、繊維が同じ方向にならないようシートの角度を変えて重ねていくことで、その形状に合わせた強度を持たせることができるようになるのだ。
しかしウェットカーボンは、硬化して形状を保つための樹脂の量が多く、そのぶん重量が増えてしまうという面がある。強度も樹脂に依存するところが大きい。こうした弱点がないのが、ドライカーボンだ。
ドライカーボンというのは、樹脂を含有させたカーボンシート(プリプレグシート)を型に貼り込んだのち、ごく簡単にいえば型ごと布団圧縮袋のようなものに入れ真空引きをすることで、不必要な樹脂を吸い出して成型するものとなる。
このとき使われているのは、熱硬化性樹脂というものだ。炭素繊維は熱を加えると強度が増すため、真空引きをして不必要な樹脂を排除しつつ、大きなオーブンで加熱することで製品の軽量化と強度が飛躍的に高くなる。
これが航空機やレーシングカー用の部材の製造方法となっている。
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