開発費は回収できた!? とにかく気合だけはスゴかった車3選

新型車や新型エンジンなどの開発には莫大なお金や時間、労力がかかります。そのため、新たにクルマをつくったら、なるべく長く、たくさん売る必要があるのですが、意外と売れなかったり、売る気がなかったモデルも存在。そこで、とにかく開発にかけた意気込みだけはスゴかったモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

メーカーの威信をかけて開発されたクルマを振り返る

 各自動車メーカーとも、新型車や新型エンジン/トランスミッションなどの開発には、莫大な費用や時間、労力がかかることから、一度つくったら、なるべく長くたくさんの台数を売ることが求められます。

技術的には秀逸だったクルマたち
技術的には秀逸だったクルマたち

 たとえばエンジンなら10年は当たり前で、長寿なものでは20年間製造されるケースもあるくらいです。

 しかし、すべてがロングセラーになるとは限らず、なかには短命に終わるモデルや、短期間で代替わりしてしまうパワートレインも存在します。

 そこで、とにかく開発にかけた意気込みだけはスゴかったモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●ダイハツ「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」

唯一無二のハイブリッド軽商用車だった「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」
唯一無二のハイブリッド軽商用車だった「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」

 1997年に、量産車で世界初となるハイブリッド車、トヨタ「プリウス」が誕生すると、その後、各メーカーからハイブリッド車が次々に発売され、一気に普及しました。

 その流れに乗りダイハツも2005年に、軽商用車では初となるハイブリッドモデル「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」を発売。

 ハイゼットカーゴ ハイブリッドは、軽商用車「ハイゼット カーゴ」をベースに開発され、1モーターを用いたコンパクトサイズの「ダイハツハイゼット ハイブリッドシステム」を採用。高い走行性能と優れた環境性能を両立しています。

 バッテリーは容量6.5Ahのニッケル水素を採用し、リアシート下に格納することで荷室容量への影響は最小限に留められました。

 燃費は10・15モードで20.0km/Lと、当時のガソリンモデルが15km/Lほどなので、約30%向上しています。

 ちなみに、現在の軽自動車やコンパクトカーのハイブリッドシステムは、エンジンの交流発電機をモーターとして使い、パワーをアシストするマイルドハイブリッドが主流ですが、モーターの出力は3馬力ほどです。

 一方、ハイゼットカーゴ ハイブリッドのモーターは減速時のエネルギー回生も可能で、出力は約13馬力を発揮する、本格的なパラレルハイブリッドが採用されています。

 価格は215万5500円(消費税5%込)と、ベース車に対して100万円以上高価だったため、顧客は、主に官公庁や地球環境に関心の高い企業でした。

 しかし、100万円の価格差を燃料代で回収するのは現実的とはいえず、ハイゼットカーゴハイブリッドの販売は低迷。2010年には生産を終了し、その後、軽商用車にハイブリッドモデルは登場していません。

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●日産「セドリック/グロリア」

画期的な技術を搭載しながらも高額すぎて売れなかった「セドリック」
画期的な技術を搭載しながらも高額すぎて売れなかった「セドリック」

 現在、国産乗用車のトランスミッションの多くはATを採用していますが、その種類は、4速から8速の変速をおこなうステップAT、クラッチを2組使うDCT、MTをベースにクラッチと変速を自動でおこなうAMT、そしてギアを使わずに変速するCVTに大別されます。

 なかでもCVTはベルトとプーリーを用いて減速比を連続的に変えることで、エンジンが効率良く出力を発生させられる回転数を保ちながら走行でき、省燃費化はもちろん変速ショックがないスムーズな運転が可能となりました。

 さらに、CVTは部品点数が少なく安価で小型化できたことから、初期は小型車や軽自動車を中心に普及します。

 しかし、CVTはベルトとプーリーの摩擦によって駆動力を伝達するため、大排気量/大トルクのクルマではスリップが生じ、伝達効率が極端に下がるという問題がありました。

 そこで、1999年に発売された日産の高級セダン「10代目セドリック/11代目グロリア」に搭載されたのが、「エクストロイドCVT」という商品名の、まったく新しいCVTです。

 エクストロイドCVTとは一般的には「トロイダルCVT」と呼ばれ、プーリーとベルトの代わりにディスクとローラーを介して駆動力を伝達します。

 構造は入力ディスク(エンジン側)と出力ディスク(プロペラシャフト側)の間にローラーが挟まっている形で、そのローラーの角度を変えるとディスクとの接点が移動し、減速比が変わるというものです。

 ディスクとローラーは非常に高い圧力のもとで摩擦と潤滑のバランスが取られているため、高い伝達効率を実現するだけでなく、大出力にも耐えられるため、ベルト式CVTでは考えられなかった、280馬力の3リッターV型6気筒ターボエンジンに対応したことで大いに話題となりました。

 理論自体は古くに誕生していましたが、どのメーカーも実現することはできませんでしたが、日産とトランスミッションメーカーのジヤトコなど数社が共同で開発に成功。

 しかし、精度の高い工作技術が要求されたことや、特殊な潤滑油が必要な点がコストアップにつながり、一般的な4速AT車に対して50万円以上高額でした。

 さらに、複雑な構造から小型化できないというデメリットもあり、セドリック/グロリア以外では、「11代目スカイライン」に搭載されたのを最後に、採用されたクルマはありません。

 また、現在はベルト式CVTでも300馬力に対応できるようになったため、再びトロイダルCVTが日の目を見ることは無さそうです。

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