池袋暴走事故が「サポカー」促進へ影響? 高齢運転者の事故防止対策が急がれる訳
高齢者向け「サポカー」というクルマは売っていない!?
クルマの技術面においても、高齢ドライバーの運転を支援する試みが進んでいます。それが、「サポカー(安全運転サポート車)」です。
最初に確認したい点は、サポカーはあくまでも“概念”だということです。
サポカーとは、クルマの種類でも、先進技術の商品名でもなく、クルマの予防安全技術で一定以上の性能を有するクルマを指します。
具体的には、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)と、停車状態からの急発進抑制装置(いわゆるアクセルとブレーキの踏み間違い防止装置)が主体となり、加えて車線逸脱防止装置や夜間のヘッドライトの自動切換え装置なども含まれます。
このような予防安全技術については、「トヨタセーフティセンス」、「ホンダセンシング」、日産「プロパイロット」、「スバルアイサイト」など、自動車メーカー各社で搭載するカメラやセンサーなどの種類や技術に違いがあります。
そのため、国はサポカーとして必要な性能について、一定の基準を設けています。
今後は、予防安全技術のアセスメントであるNCAPとの連携をすることで、性能の基準をより明確にすることが求められると思います。
また、高齢者にとって新たに新車や中古車を購入することが経済的な負担になることもあります。そのため、既販車に対する後付けの急発進防止装置についても拡充が進みでいます。
トヨタは2018年後半から「プリウス」向けの後付け装着を発売して以来、多種展開し、ダイハツも追従。そのほかのメーカーも開発を加速させています。
トヨタの場合、前後バンパーを取り外して超音波センサーを取り付けるため、メーカーとしての補償を含めて大きなハードルがありましたが、社会需要に足して早急な判断を下したと思います。
このほか、アフターマーケット商品が複数存在しますが、国はこれらも含めて、独自に検証をおこない、個別の認定結果を公表しています。
そのなかで、技術手法による各社の性能差が存在することを認めたうえで、消費者に対して商品の特性に対する理解を求めています。
後付けの急加速抑制装置については、国のほかに自治体による個別の補助金制度があります。たとえば、東京都では最大9割補助(最大限度額は台当たり10万円)を、当初2020年8月31日までだった補助期間を、10月31日までに延長して実施しています。
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今後、注目されるサポカー関連技術は、走行中の急加速抑制装置でしょう。
トヨタは2020年7月から新車でのオプション設定を始め、後付け急加速抑制装置のアップグレードも対応します。
これは、実車を介して収集したビックデータを基に、車載センサーが交差点での右折時や、坂道などの走行時での不自然なアクセル操作を感知し、急加速を抑制するものです。
トヨタは独自開発したアルゴリズムを他メーカーと共有する考えです。
走行中にアクセルを踏んでも加速しない装置をメーカーが量産することは異例です。早期に発売が決まったのは、池袋暴走事故など高齢ドライバーによる大事故を抑制することを念頭においたことを、トヨタ幹部も認めています。
各種の運転支援システムが、高齢ドライバーの事故軽減につながる可能性は確実に高くなります。
そのうえで大事なことは、高齢ドライバー自身が運転することの必要性と危険性を十分に理解することが求められていると思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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