ワゴン需要減少でもなぜ新型投入? スバルが「レヴォーグ」を刷新する狙いとは
スバルのラインナップで中心的な存在になったレヴォーグ
もうひとつの意味は、スバルの車両開発コンセプトに、ワゴンというボディ形状が適していることです。
先の開発者の言葉にあった「より遠くまで、より速く、より快適に、より安全に」は、スバルの全車種に通じる考え方でもあります。
そして「速く、快適に、安全に」走るには、低重心で左右に振られにくいクルマ造りが求められます。この条件に合ったボディタイプは、ルーフの低いセダンやワゴン、クーペです。
「より遠くまで」という要素も加えると、荷物を相応に積める使い勝手の優れた荷室も必要です。アクティブな雰囲気まで含めて、ワゴンボディが相応しいわけです。
スバルがワゴンに力を入れる意味は、欧州車を見ても分かります。
前述の通り、日本と北米ではワゴンの車種数が大幅に減りましたが、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンといった欧州車には、いまでもワゴンが豊富に用意されています。
欧州車にワゴンが多い理由は、低重心のボディにより、積載性に優れたクルマは走行安定性と乗り心地を高く保ちやすいからです。
欧州では日常的に高速走行をおこなう機会があることから、ほかの地域以上に優れた安定性が求められます。
そのためSUVが普及した現在でも、欧州ではワゴンの支持が厚く、日本にも豊富なラインナップが輸入されています。
そしてスバルの場合、2008年に3列シートミニバンの「エクシーガ」を発売しましたが、売れ行きは伸び悩み、SUVの「クロスオーバー7」に発展させても低迷して終わりました。
「レガシィアウトバック」は、北米のニーズに合わせてボディが拡大し、国内では売れ行きを下げています。
そうなるとスバルとしては、ミドルサイズワゴンのレヴォーグが自ずから中心的な存在になるのです。
スバルにはミドルサイズカーの標準ともいえる「インプレッサ」、そのSUV仕様になる「XV」、本格SUVの「フォレスター」、スポーツセダンの「WRX」、スポーツクーペの「BRZ」もありますが、スバルの考え方をもっとも色濃く反映させた主力車種はレヴォーグだといえます。
ワゴンの需要がミニバンなどに押されて下がったのは事実ですが、車種の数はそれ以上に減ってしまいました。
その結果、国産ワゴンを好むユーザーの視線は、設計の新しいミドルサイズワゴンのレヴォーグと、コンパクトなカローラツーリングに向けられています。
ライバルになるワゴンが減ったいまだからこそ、レヴォーグにとっては売れ行きを伸ばすチャンスで、力の入った開発をしているともいえるでしょう。
レヴォーグが新型になった背景には、いろいろな理由とスバルの思惑があるのです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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