羊の皮を被った狼! M3エンジン搭載のナロー3シリーズとは

エンジン以外はフツーという羊狼な3シリーズとは?

 M3のエンジンをショートストローク化したイタリア仕様の320isが、サザビーのオークションに出品された。この個体はAK95、つまり2ドアボディなのだが、資料によると320isの2ドアボディは、2540台しか生産されなかったとのこと。

●1998 BMW 320is

M3に搭載されていたS14型をベースに、ショートストローク化によって排気量を2.0リッターとしたエンジンを搭載(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
M3に搭載されていたS14型をベースに、ショートストローク化によって排気量を2.0リッターとしたエンジンを搭載(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 ボディカラーはダイアモンド・ブラック・メタリックで、これは1987年9月から1990年11月までに生産されたAK95とAC95に施されたボディカラーとなっている。

 本来はトランクリッドに装備されている、320isのエンブレムは、レス仕様となっている。これは初代のオーナーがオーダーをしたときに、レス仕様としたものではないかと推察されるが、詳細は不明。

 逆アリゲーター式のボンネットを開けたエンジンルームには、見た目からでは2リッターであることが判別できない、S14型エンジンが搭載されている。結晶塗装の状態もいい。

 インテリアでいえばシートはファブリックとレザーのコンビだが、擦れ感はなし。樹脂製パネルなども、非常に状態がいい。走行距離はメーターによると1万6000kmあまりとなっているが、おそらくこのエンジンルームやインテリアの状態の良さからすると、正しい数値なのではないかと思われる。

 また、純正で装備されていたサンルーフは問題なく動くほか、ホイールは当時大人気だったBBS製1ピースをセット。純正ホイールではないが、1980年代BMWカスタムの定番のホイールなのでマイナス評価になることはまずない。

 標準装備されていた車載工具は、ジャッキも含めてすべて揃っており、イタリアのディーラーが整備をしていたことを示す、整備記録簿も付属している。

 そんな320isだが、オークションでは2万4750ポンド(約350万円)での落札となった。当時、日本でのE30 M3の販売価格は、658万円。1989年に発売された、2リッターターボ4WDの三菱「ギャランVR−4」が284万円、スバルの初代「レガシィRS」が286万円だった頃である。

 1992年に発売された同じく2リッターターボ4WDのランチア「デルタHFインテグラーレ」が、税別495万円だったということを考えても、この685万円がいかに高かったのか、想像がつくだろう。

 現在、E30 M3は2.3リッターモデルが500万円以上、スポーツエボリューションに至っては1000万円以上でも不思議ではないが、そのほかのE30 3シリーズモデルとして約350万円とは、破格のプライスである。

 ちなみに320isは、日本国内にも並行輸入された個体が数台存在している。庶民の立場でいえば、税金が高いのは困る。そこでその条件をクリアするために開発する自動車メーカーの苦労が偲ばれ、またレアモデルだからこそ後々価値があがるというのも、クルマのおもしろいところである。

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