なぜヒストリックカーのボンネットは逆開きが多い? 理由を解明
フロントにエンジンを搭載したクルマでは、エンジンフード(ボンネット)の開き方が数種類ある。しかも、時代によって主流となる開閉方法があるようだ。どうして現在はかつて主流だった「逆アリゲーター式」が採用されないのだろうか。
ボンネットの開き方で整備性は変わる?
オイル量の点検や、ウィンドウウォッシャー液の補充など、メンテナンスをするときにはかならず開けることになるのがボンネットだ。
フロントにエンジンを搭載している現代のクルマにおけるボンネットの開き方は、ヒンジがAピラー側にあり、フロントバンパー側を持ち上げて開ける方式が一般的となっている。
ボンネットを開けたクルマの姿を真横から見ると、ちょうどワニが口を開けたように見える、ということからこの方式は「アリゲーター式」と呼ばれている。
ところがかつては、後ろ側を持ち上げることでボンネットを開けるクルマが主流だったことをご存知だろうか。
たとえば国産車であれば、KPGC10/PGC10型「スカイラインGT-R」、いわゆる箱スカや、S30型「フェアレディZ」をイメージすると分かりやすいだろう。
ダッシュボード下にあるボンネットロック解除ノブを引くと、ボンネットの後ろ側が持ち上がり、ノーズのヒンジを支点にしてボンネットを開けることができた。
欧州車でいえば、ノイエクラッセ時代から1980年代ぐらいまでのBMWや、アルファロメオ「スパイダー・ヴェローチェ」なども、同じようにボンネットを開けることができる。こういう開けかたのことは「逆アリゲーター式」、もしくは「チルト式」と呼ばれている。
しかしこの逆アリゲーター式ボンネットは、いまでは一部車種を除いて絶滅危惧種といえるほど、ほぼ見なくなってしまった。それはなぜなのだろうか。それを知るために、まずはアリゲーター式と逆アリゲーター式の、メリットとデメリットをそれぞれ説明しよう。
●逆アリゲーター式ボンネットのメリット・デメリット
逆アリゲーター式ボンネットは、ノーズ側にヒンジがあるため、走行中に何らかのトラブルが起き、ボンネットキャッチが機能しなくなった場合でも、ボンネットが風圧によって開いてしまうということはない。
クルマは走行中、空気を押し分けて走っているのだが、Aピラーの付け根付近ではその力が強く掛かっているために、ボンネット後端にあるキャッチが外れてしまっても、大きく開いてしまうことはないのだ。そのため過去のスポーツカーやレーシングカーは、こぞって逆アリゲーター式ボンネットを採用していた。
ところが、逆アリゲーター式ボンネットには致命的な弱点がある。整備性がすこぶる悪いという点だ。
逆アリゲーター式ボンネットはフロントノーズを支点にしてボンネットが開くため、ヒンジ部分の設計を工夫すれば、ボンネットを大きく立ち上げることができる。そのため作業スペースを大きく取ることは可能なのだが、しかしボンネットそのものが前方を塞いでしまうために、メカニックはボディの側面からしか、エンジンルームにアクセスできない。
これは、公道を走行するスポーツカーならまだしも、1秒でも速く整備作業を終わらせたいレーシングカーにとっては、大きなハンデキャップとなってしまう。
また、逆アリゲーター式ボンネットはヒンジが前にあるため、正面衝突をした場合に後方のキャッチが外れてしまい、ボンネットがそのままフロントガラスを突き破って車室内に飛び込んでくるということが容易に想像できる。さらに頑丈なヒンジが前方にあるということは、対人安全性という面でも不利となる。
そこでアリゲーター式ボンネットへの移行が進むこととなった。
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