安倍政権終焉でクルマの自動運転どうなる? トヨタも関わる「SIP」現状と課題とは

情報発信に課題? 自動運転研究の今後は

 そうしたなか、今回、一部報道陣向けに実施された、東京臨海部実証試験の視察での見所は大きく3つありました。

 ひとつめは、お台場地域での「信号協調」です。

 交差点近くのクルマに対して、信号機の色とそれがあと何秒続くかの情報を、周波数帯760MHzで常に発信しています。

 情報を受信するクルマとして、SIPに参画している金沢大学・菅沼研究室で開発した、レクサス「RX450h」をベースとした自動運転車を使いました。

 菅沼直樹教授は「この車両は、カメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどフルスペックのセンサーを搭載していますが、信号機の情報は自動運転の精度を上げるためにとても有効です」と指摘します。

 ふたつめは、首都高速1号羽田線への料金所から本線に同流する際、本線側の交通情報を同流するクルマに伝える装置です。本線側に走行の優先権があるなかで、合流側の速度を適宜コントロールします。

 アイサイトXをさらに一歩先に進めるには、こうした路車間通信が必然となります。

燃料電池バスの自動運転の様子
燃料電池バスの自動運転の様子

 そして、2020年7月にオープンした羽田イノベーションセンターを起点とした、燃料電池バスの自動運転も車内で体験しました。

 道路側に磁気マーカーを一定間隔で埋め込み、その位置をバス側のセンサーが感知して進みます。さらにバス側にカメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどを配置しています。

 羽田空港第三ターミナル周辺のバス専用レーンも使いましたが、一般交通も混走する交差点での右折もスムーズにこなせました。

※ ※ ※

 現在、今回のSIPのみならず、全国各地で自治体や個別企業が独自におこなっている自動運転実証試験が数多く存在していて、庶民にとってはどれが重要なのかが分かりにくい状況にあると思います。

 日本で自動運転は、いつまでに、どこで、どのような形で実用化するのか。クルマのユーザーに対して、また自らはクルマを運転しない人に対して、分かりやすい形での情報発信が必要だと感じます。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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