ディーゼル車が明暗分けた!? 輸入車1位がVWからメルセデス・ベンツへ入れ替わった訳
ディーゼル車の有無でVWとメルセデス・ベンツに差が生じた
メルセデス・ベンツやBMMに比べると、VWは不正問題の前から新型車の投入が乏しかったです。
当時のVWのSUVは「ティグアン」とLサイズの「トゥアレグ」くらいで、ほかのドイツブランドに比べると、SUVの流行に乗り遅れている印象がありました。
そしてメルセデス・ベンツとBMWは、クリーンディーゼルを割安な戦略価格で投入しています。同排気量のガソリンターボと比べて、20万円程度の上乗せに抑えた車種も多かったです。
しかもクリーンディーゼルは、日本ではクリーンエネルギー自動車とされるので、購入時に納める自動車取得税(現在は環境性能割)や自動車重量税は非課税となります。
クリーンディーゼルターボの価格が約20万円高くても税金の差額で取り戻すことができ、実質的な出費はガソリンターボと同等になります。
とくに高価格な輸入車は自動車取得税も高額になるので、非課税のメリットは大きいといえます。
クリーンディーゼルターボは実用回転域の駆動力が高く、燃料となる軽油は安いです。購入時の出費がガソリンターボと同等なら、明らかにクリーンディーゼルターボが買い得で、車種によっては販売総数の7割から8割前後をクリーンディーゼルターボが占めました。
ところがVWは、北米で不正問題を生じたため、日本でクリーンディーゼルを発売するタイミングを逃してしまったのです。
当時、VWの販売店スタッフからは、次のような話が聞かれました。
「ディーゼルの不正問題が発覚し、商談が途中で立ち消えになったり、お客さまからVWのロゴさえ見たくないといわれたこともありました。
お客さまの信頼失墜は、販売現場の頑張りである程度カバーできますが、いまの時代にディーゼルがないのは辛いです。
輸入SUVでは、ディーゼルであることを条件に車種を決めるお客さまも多く、ガソリンだけでは購入の候補にもあがりません」
結局、不正問題でVWがクリーンディーゼルを導入するタイミングが遅れ、「パサート」に搭載して日本国内で発売したのは2018年2月でした。
VWはメルセデス・ベンツに比べると、SUVを含めた車種の充実と、クリーンディーゼルの搭載で差を付けられたのです。
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メルセデス・ベンツの世界販売台数は、2010年は127万台、2015年は187万台、2019年は246万台と増えており、車種数も増加して日本国内の売れ行きも伸びています。
ただし販売規模が拡大するに従って、メルセデス・ベンツのブランドイメージも変わってきました。
コンパクトなAクラスや「Bクラス」、SUVは「GLA」「GLB」「GLC」「GLCクーペ」と増えて、車種構成も分かりにくくなりました。
いまはまだ、「Sクラス」「Eクラス」「Cクラス」を柱にしていた時代の高級な印象が残っていますが、今後はメルセデス・ベンツの位置付けが変わる可能性もあります。
売れ行きを急増させながら、プレミアムブランドの位置付けをいかに守るのか、「選択と集中」がキーワードになる時代に、メルセデス・ベンツは興味深い展開を見せています。
一方、VWもこのまま国内販売の2位、3位に甘んじているわけにはいかないでしょう。次期ゴルフでは1位奪回をねらって、新しい展開を見せるかも知れません。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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