なぜ数字名? ポルシェ「911カレラ」「718ケイマン」の車名が意味するものとは?

カレラの名は「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」というレースイベントが由来

 ちなみに900番台を使ったのは、フォルクスワーゲンの使っていない開発タイプ・ナンバーを使うためだったという。

1963年のフランクフルトショーでワールド・プレミアされたポルシェ901型「911」
1963年のフランクフルトショーでワールド・プレミアされたポルシェ901型「911」

 当時のポルシェは独立したメーカーであったが、フォルクスワーゲンとの提携が検討されていたからだ。提携後を見据えると、フォルクスワーゲンと同じ開発タイプ・ナンバーを使うと、この先、都合が悪くなる。そこでフォルクスワーゲンとバッティングしない900番台が採用されたのだ。

 また、発表時は6気筒エンジン版を「901」に、4気筒を「902」と呼んでいた。しかし、3桁数字の真ん中に0を使うという手法は、プジョーが古くから商標登録をおこなっていたこともあり、最終的に量産モデルでは911の名称が使われることとなったのだ。

 その後、ポルシェは「914」や「924」、「928」をデビューさせる。914はミッドシップの4気筒エンジン車、924はFRの4気筒エンジン車で、928はFRの8気筒エンジン車。3桁の数字の最後が、一時的ではあるがエンジンの気筒数を表していたのだ。

 そして911シリーズは世代を重ねて進化していくが、クルマの名称はそのまま911を守り続けた。そのため、ただ911というだけでは、どの世代のモデルかが判別できない。

 そこで型式コードを併用することで、どの世代の911なのかを区別することになる。その数字が、964、993、996、997、991というものになる。

 また2016年から、ボクスターとケイマンには718の名称が使われるようになった。これは550スパイダーの後継モデルとして1957年にデビューした718というレーシング・マシンに由来する。

 これによってポルシェの2ドアのスポーツカーは、RRが911、ミッドシップ(MR)が718という名称を基本に、その後に、カレラやタルガ、ターボ、ボクスター、ケイマンといった名称を付け加えることになったのだ。

 ちなみにカレラの名は、1950年代にポルシェが活躍したカレラ・パナメリカーナ・メヒコというレースイベントが由来だ。4ドアセダンのパナメーラの名も同じものが由来となる。

 ミッドシップモデル718のオープンカー・バージョンとなるボクスターの名称は「ボクサー・エンジン(水平対向エンジン)」と「ロードスター/スピードスター(オープン2座のスポーツカー)」の造語。そしてケイマンは中南米に生息するワニ(CAIMAN)が由来。比較的、小柄でありながらも獰猛なワニのイメージを求めたのだろう。

※ ※ ※

 開発コードの3桁数字を使った356で、自動車メーカーとして歩み出し、911という同じ開発コードを使った名称の名車を生み出したポルシェ。

 しかし、1990年代のボクスターの登場以降は、命名方法にも柔軟性を持つようになり、カイエンやケイマン、パナメーラなどのペットネームを使うようになった。

 しかし、2016年より、718の名称を復活させることで、2ドアスポーツカーは伝統の3桁数字のタイプ・ナンバーを基本とすることに。この名称方法の変化は、ポルシェ自身が改めて伝統を大切にしよう、という意思表明なのではないだろうか。

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