トヨタがなぜ自転車サービス参入? 今後拡大も視野に「ちかチャリ」開始の狙いとは
ユーザーの期待値も高いトヨタのシェアサイクルの目的とは
次に聞いたのは、実証実験としていることについてです。都内ではNTTドコモなど、さまざまなシェアサイクルがすでに実用化されています。そこに後発として参入するのに、なぜ実証実験が必要なのでしょうか。
この点については、面白い答えが返ってきました。
「ワンウェイ以外の方法で、事業採算性を探るため」というのです。
一般的にシェアサイクルは、A地点からB地点までワンウエイ(乗り捨て型)で利用する人が多くいます。
一時、中国で爆発的なブームとなったシェアサイクルは、貸出・返却ポートを設定しないことが利点でしたが、その反面、市街地のいたるところに自転車が大量に放置され歩行や自動車の通行を妨げたため、当局が強制的に撤去する事態となりました。
また、ポートを使った場合を含めて、ワンウェイは自転車が偏在し、それを修正するために小型トラックに自転車を積み込んで貸出場所に再度置き直すという手間とコストがかかります。
TMSの実証実験では、貸出と返却が同じラウンドトリップを基本として、「ワンウェイでなくとも十分なニーズはある」という仮説のもと、成立する地域密着型のビジネスモデルを探るのです。
ポートについても、レンタカー店舗だけではなく、他事業者との連携を考慮したり、ポートの場所と自転車の台数について、実証実験の結果とユーザーのニーズをふまえて拡大することも検討しているといいます。なお、実証実験の期間は設定されていません。
ユーザー目線で見ればちかチャリは、「トヨタがやっているなら、間違いない」と、サービスに対する期待度が高いはずです。
TMSとしても、その点は当然自覚していて、トヨタの看板を掲げるからには「トヨタらしさ」を徹底して追求していくということです。キーポイントとなるのは、安心、安全、清潔、快適です。
自動運転や高度なコネクティビティといった最先端技術とは一線を画す、地域密着型でのトヨタの新しいサービスであるちかチャリの今後の動向に期待したいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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