ルイス・ハミルトンの父が集めたクラシックカーに価値はある!?
ルイス・ハミルトン選手の父が集めたクルマとは?
今回の「The Anthony Hamilton Collection」の出品リストを見ていると、アンソニー氏が今や消滅して久しいブランド「トライアンフ(4輪)」の熱心なエンスージアストだったことが良くわかるだろう。
彼のコレクションは、トライアンフの人気モデルの大部分を網羅しているのだ。
●アンソニー氏の珠玉の英国車コレクション
まずは1950年代から1970年代にかけて、トライアンフの代名詞だった「TR(Triumph Roadster)」から。1957年に「TR3」と「TR3A」の折衷版として少数が作られた「TR3/3A」(推定落札価格2万5000~3万ポンド)は、2万7563ポンド(邦貨換算約382万円)で落札。
1960年型TR3A(推定落札価格3万5000~4万ポンド)は、3万7688ポンド(邦貨換算約523万円)でハンマーが落とされた。
また、彼のトライアンフ・コレクションの白眉ともいうべき1台、TR3Aをベースにイタリアのミケロッティが少数(試作車含めて330台)のみ製作し、のちの「TR4」のプロトタイプにもなった1960年型「イタリア2000」は、12万−14万ポンドの推定落札価格に対して13万1000ポンド(約1820万円)で落札された。
TR4に6気筒エンジンを搭載した後継車ながら、生産台数の少なかった「TR5」は、1968年型が8万−9万ポンドの推定落札価格に対して、8万6250ポンド(約1200万円)で落札となった。
さらに、アンソニー氏のトライアンフ愛の強さは、熱心なファン以外にはいまいちウケの悪かったモデル、例えば3万4785ポンド(邦貨換算約482万円)で落札された1977年型スタッグMkIIIなども、美しいコンディションで維持されていたことからも感じられる。
また、長らく「トライアンフTRの駄作」と称されていた「TR7」をオープン化し、ローバーV8エンジンを搭載した、いまや希少性から評価が急上昇している「TR8」も出品されたが、こちらは3万5000−4万ポンドの推定落札価格に対して3万1500ポンド(邦貨換算約437万円)で落札という、少々残念な結果に終わった。
一方ハミルトン・コレクションには、現役時代にトライアンフのライバルだった「MG」も含まれており、このオークションでは少数のみ製作されたMGAのDOHCエンジン搭載モデル、1959年型「MGAツインカム」も出品。5万5000−6万5000ポンドの推定落札価格に対して、5万6250ポンド(邦貨換算約780万円)という上々の成果を得た。
ほかにも、旧ビルマ総督マウントバッテン卿が初代オーナーだったという、1965年型モーリス「ミニ・トラヴェラーDX」は、2万3675ポンド(邦貨換算約328万円)で落札、スポーティで好ましい雰囲気にレストアされた1968年型モーリス「ミニ・クーパーS」は、3万3500ポンド(邦貨換算約465万円)と、それぞれエスティメートに届く金額で落札された。
……と、ここまでは英国製クラシック・スポーツカー愛好家のである父アンソニー氏のコレクションとしては、いわば典型的なモデルたちだったのだが、どちらかといえば息子ルイス・ハミルトン卿の好みそうな近現代のスーパーカーや、アメリカ製スポーツカーも出品されたことが、筆者にはなぜかとても意味深に感じられた。
2006年型メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン」は、エスティメート17万5000−20万ポンドに対して18万2250ポンド(邦貨換算約2530万円)で落札。
2006年型フォード「GT」はエスティメート25万−28万ポンドに対して、24万1875ポンド(邦貨換算約3350万円)で落札。そして、1957年型シボレー「コルベットC1」は、7万5000−9万ポンドのエスティメートに対して、7万8750ポンド(邦貨換算約1090万円)で、それぞれ新しいオーナーが決定した。
これらの3台は、もしかしたら息子ルイス卿のものだったのか……? あるいは父子に溝があった時期に入手したものを、和解を機に潔く放出しようとしたのか……?
そんな妄想が掻き立てられる、実に興味深いオークションであった。
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