レーシングライダーは怪我への耐性ができている? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.52~

レーシングドライバーの筆者(木下隆之)から見ると、生身の身体を晒して走るライダーは“クレイジー”だと言います。怪我に対する捉え方も、ドライバーとは異なるようです。

ドライバーよりも怪我の頻度が高いライダーには独特の考え方が……

 レーシングカー(4輪)に乗って戦うレーシングドライバーと、レーシングバイク(2輪)に跨って競い合うライダー、どっちの方がクレイジーなのか? という議論はとどまるところを知らない。ただ個人的(筆者:木下隆之)な感覚では、ロールケージに守られている方が、生身の体を晒すことほど危険ではないような気がする。自らレーシングマシンのコックピットで戦いながらも、あんな真似事はできないよなぁ、と思う。

バイクをたしなむレーシングドライバーの筆者(木下隆之)にとって、レーシングライダーの考え方にはいつも驚かされる

 4輪のレースで生死に関わるのは、マシンに潰されるか火に包まれるかだろう。だから、怪我率は低いけれどヤッたらデカイ。ライダーは放り投げ出される確率が高いので、火に包まれる危険度は低そうだ。

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 それにしてもライダーは骨折が多い。折れてもいないのに鎖骨にプレート手術をするライダーがいる、という話は以前このコラムで綴った。どうせ鎖骨を骨折するからと、事故に遭遇する前に手術を施しているというのだから、クレイジーである。

 ライダーは怪我に耐性ができているようで、骨折や手術にはある意味無頓着である。骨折したままレースを走った、という話も耳にすることがよくある。痛みの神経が麻痺しているのかもしれない。

 友人のプロライダーが、右手の人差し指と中指、2本の指の腱を切った。レース中に横転し、マシンと路面に挟まれたのだ。治療を続け、完治までもう少し時間が必要だったが、時は待ってくれない。次戦が迫ってきた。肝心の右手は腱が切れている……それでも彼は諦めなかった。

 握り締める力は残されているから、ハンドルを掴むことはできる。ブレーキレバーを引くことも可能だ。だが、掌を開けない。ジャンケンの“パー”ができないのである。グリップを握って手首をひねれば、スロットルオンにはなる。ブレーキレバーを握れば、ブレーキングも可能だ。だから、ライディングは可能なように思えた。

『BMW Team Studie』のドライバーとして2019年ブランパンGPアジアシリーズに参戦した筆者(木下隆之)

 とはいうものの、よく考えてみれば困難である。いったんグリップを握った掌を開くことができないから、ブレーキレバーに指をかけられない。指さえかかればブレーキングが可能なのだが、そうはならないのだ。万事休す。

 だが友人は、ある細工をして出場した。人差し指と中指の先端に太いゴムをくくりつけ、手の甲側を伝ってそのゴムの端を手首に巻き付けたのだ。力を込めればハンドルも掴めるしブレーキレバーも引ける。握る力を緩めれば、ゴムの力で掌が「ビョーン」と広がるのである。

 それでレースを完走したというのだから、やはりレーシングドライバーよりもライダーの方が、頭のネジが外れているようである。

提供:バイクのニュース


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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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