軽自動車ブームは都市部にも浸透!? ホンダ「N-BOX」が圧倒的に有利な訳

都市部においても軽自動車ブーム到来!?

 軽自動車は都市部でも堅調に売れるようになってきました。2005年まで、東京都における軽自動車の普及率は10世帯当たり1台以下でしたが、いまは1.2台です。

 そしてホンダは都市部に販売店が多いため、軽自動車のファーストカー需要が増えるほど、N-BOXも売れ行きを伸ばしやすくなります。

ホンダ「N-BOX」
ホンダ「N-BOX」

 そこで2019年度における軽乗用車の売れ行きを地域別に見ると、もともと軽自動車普及率の高い鳥取県や佐賀県では、ホンダのシェアは20%以下です。いまでもダイハツとスズキの天下です。

 それが東京都や神奈川県ではホンダ比率が20%を超えており、今後も軽自動車は都市部で売れ行きを伸ばすため、N-BOXの販売にも一層の弾みが付くでしょう。

 このほかN-BOXが売れ行きを伸ばした背景には、先代N-WGNの伸び悩みもあります。人気のN-BOXは2017年8月にフルモデルチェンジをおこなって現行型になり、安全装備と運転支援機能を大幅に充実させて、販売台数をさらに増やしました。

 ただし現行N-BOXが採用した安全装備と運転支援機能は、マイナーチェンジで先代N-WGNに装着することはできません。そのためにN-WGNは相対的に設計が古くなって売れ行きを下げ、約2年後の2019年7月に現行型へフルモデルチェンジしました。

 現行N-WGNの衝突被害軽減ブレーキは自転車検知も可能で、運転支援機能も充実させましたが、電動パーキングブレーキに不具合が生じて生産が滞りました。

 2020年にようやく生産が再開され、2月と3月の届け出台数は1万台を超えましたが、4月以降はコロナ禍の影響で再び再び落ち込んでいます。

 ホンダの軽乗用車には「N-ONE」もありますが、2012年の発売とあって設計が古く、2019年度の届け出台数は1万1788台(1か月平均で982台)に留まりました。その結果、ホンダの軽乗用車に向けた需要がN-BOXに集中して、売れ行きを著しく伸ばした事情もあります。

 以上のようにN-BOXは、先代型からの乗り替えを含めて需要が多く、現行型は質感、静粛性、安全装備、運転支援機能も向上させました。N-WGNとN-ONEが販売を伸ばせない事情も重なり、現行N-BOXは国内販売の最強車種になったわけです。

 N-BOXが好調に売れるのは良いことですが、ほかのホンダ車の売れ行きが販売力を奪われて低調になっています。

 2019年度に国内で売られたホンダ車の内、N-BOXが36%を占めました。日本で売られるホンダ車の3台に1台以上がN-BOXです。軽自動車全体では50%を超えています。

 こうなるとホンダのブランドイメージも軽自動車中心に変わり、売れ筋車種のコンパクト化が進みました。2019年度において、軽自動車+フィット+フリードの販売台数を合計すると、ホンダ車全体の75%に達します。

 この傾向は今後さらに顕著になるでしょう。N-WGNの商品力もN-BOXと同等かそれ以上に高く、コロナ禍が終息すれば、売れ行きを伸ばします。2020年秋(販売店によると10月以降)には、N-ONEも新型にフルモデルチェンジします。

 軽自動車が商品力を高める一方で、「シビックセダン」「グレイス」「ジェイド」は国内販売を終了します。

 かつて人気の高かった「オデッセイ」や「CR-V」も伸び悩み、「アコード」は日本仕様を北米に比べて約3年も遅くフルモデルチェンジしました。

 魅力を増す軽自動車と、商品力を下げていく小型/普通車の差が激しく、軽自動車+フィット+フリードの販売比率が80%を超えるかも知れません。そのほかの車種は、すべてを合計しても20%以下になります。

 いまはホンダに限らず、電動化を主体に据えた環境性能の向上、自動運転や安全装備の開発が急務になり、各メーカーともに車種をなるべく減らしたいと考えています。

 ホンダも今後、国内の狭山とイギリスの工場を閉鎖する予定で、いわゆる選択と集中が加速します。国内で売られるホンダ車が、軽自動車とコンパクトカー中心になることは、十分に考えられるでしょう。

 N-BOXやN-WGNは優れた商品で、今後登場するN-ONEも、同様の安全装備を採用して安心して使える上質な軽自動車になると思います。

「ステップワゴン」、オデッセイ、CR-V、シビック、アコードなども、これらの車種に負けないように、商品力を高めて国内販売を続けて欲しいです。

ホンダ N-BOXの詳細を見る

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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