ポルシェがアウディを作った!? 格別なアウディ クワトロ3選
クワトロ40周年を迎えたアウディは、2019年に「RS」シリーズの25周年を迎えていた。アウディの高性能モデルとその象徴である「RS」シリーズは、どのような経緯で開発され、進化していったのか、代表的な3車種から紐解いていこう。
ポルシェ製アウディは、ポルシェの救済策だった!
2020年、AWD駆動システム「クワトロ(quattro)」の40周年を迎えたアウディは、2019年に同社の高性能スポーツモデルを象徴する「RS」シリーズの25周年を祝していた。
元祖アウディ「クワトロ」の成功で、スポーツイメージの構築にも注力しはじめていたアウディは、1983年にかつてのNSU(アウディ前身のひとつ)の本拠ネッカーズルムに「quattro GmbH(クワトロ有限会社)」社を設立。
アウディ社のモータースポーツ活動を担当するほか、アウディ「R8」や、一連の「RS」モデルの車両開発および生産にも参画してきた。
「クワトロGmbH」は、2016年に現在の「Audi Sport GmbH」に改称。引き続きR8やRSシリーズの生産を担当するほか、「Audi Sportカスタマーレーシング」部門が顧客のモータースポーツ活動をサポートするようになった。
さらに「Audi exclusive」プログラムを介したユーザーの車両のカスタマイズ対応、「Audi Sportコレクション」として販売されている、ライフスタイル製品のプロデュースなどもおこなっている。
今回は、アウディにとって重要なパートナーである旧「クワトロGmbH」が開発した象徴的なモデルであり、「RS」の開祖となった歴史的モデルを選出し、紹介させていただくことにしよう。
●アウディRS2アバント:1994-1995
アウディ「RS」の開祖となった「RS2」は、1990年代初頭から一時期経営危機に瀕していたポルシェを救済する目的も兼ね、ポルシェによって開発・生産されたモデルだった。
この直前のポルシェは、「928」シリーズのセールスが振るわなかったことなどを要因として慢性的な経営危機に陥っており、財政破綻も間近では? という憶測さえ取り沙汰される状況となっていた。
そこで、ポルシェ社の大株主であるとともに、ポルシェ一族出身の故フェルディナント・ピエヒ博士が率いていたフォルクスワーゲン・グループは、傘下のアウディとともに、ポルシェの危機を打開する救済策として、アウディ「RS2アバント」の開発・生産をポルシェに委ねることとしたのだ。
こうして、ポルシェの社内コード「Typ 2862」のもと開発されたRS2アバントは、同時代のアウディ「80(現在のA4シリーズに相当)アバント」がベースモデル。
2.2リッターの直列5気筒SOHC+大型ターボチャージャー付きエンジンを搭載し、最高出力は315ps、最大トルクは41.8kgmをマークした。
ドライブトレインはもちろん4WDの「クワトロ」システム。6速MTとの組み合わせにより、0-100km/h加速5.4秒、最高速262km/hという、当時としてはスーパースポーツにも匹敵する高性能を誇った。
また、シャシにもポルシェによる高度なチューニングが施され、ブレーキキャリパーとディスクローターは伊ブレンボ社製のポルシェ「928S4」用が用いられた。
また、ホイールには、ポルシェ「911カレラRS(964)」や「911カレラ カップ」仕様と同じデザインの17インチ軽合金ホイールが標準装着された。
1993年のフランクフルト・ショーにてショーデビューを果たしたRS2は、翌1994年から、かつては伝説のハイパーカー、ポルシェ「959」の生産を担当していたことでも知られる、ツッフェンハウゼンの工場で生産をスタートした。当初は世界限定2200台の生産予定だったが、オーダーが殺到したことから最終的には2891台がラインオフしたといわれている。
また「アバント」ではなくセダンボディを持つRS2が、故フェルディナント・ピエヒ博士のオーダーによってワンオフ製作されたという逸話も残っている。
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