スーパーカー新時代を築いたマクラーレン「F1」とブガッティ「EB110」は、ハイパーカーの予言だった

1970年代の第一次スーパーカーブームの洗礼を受けた少年は、バブル時代の投資目的となった第二次スーパーカーブームを経験し、スーパーカー百花繚乱といった第三次スーパーカーブームを経験することになる。スーパーカー大王こと山崎元裕氏による、スーパーカーブームの歴史解説はいよいよ今回がラスト。スーパーカーはさらに高みを目指したハイパーカーへと時代は変わっていく。

ブガッティとマクラーレンの登場が、一気に新たな時代の扉を開いた!

 大人がブームの主役となった、日本での第二次スーパーカー・ブームは、バブル景気の崩壊によって一気に消え去ってしまう事態に追い込まれてしまったが、スーパーカーそのものは、世界各国で確実な進化を遂げてファンの目を楽しませていた。

ゴードン・マレーが手掛けたマクラーレンF1は、究極のロードカーであった
ゴードン・マレーが手掛けたマクラーレンF1は、究極のロードカーであった

 そのなかでもまず注目しておきたい1台といえるのが、イタリアの田舎町、カンポガリアーノで復活を遂げたブガッティだ。ブガッティが1991年にデビューさせた「EB110」は、かつてランボルギーニ時代に、「カウンタック」を世に送り出したパオロ・スタンツァーニの手によるものである。

 エクステリアデザインの原案は、マルッチェロ・ガンディーニによるものとなれば、スーパーカーのコアなファンが心を動かされないわけはなかった。

 さらにこのEB110は、カーボンモノコックのミッドに3.5リッターのV型12気筒+4ターボエンジンを搭載。最高出力は初期モデルの「GT」でも560psに達し、さらにスタンツァーニの夢であった4WDの駆動方式を採用していた。それはまさにカウンタックの正常進化型といえたのだ。

 このようなモデルを見せつけられたのでは、老舗のライバルメーカーも黙ってはいられない。ランボルギーニはついに「カウンタック」をフルモデルチェンジし、1990年に後継車の「ディアブロ」を発表。

 ディアブロにもデビュー後すぐに4WD仕様が追加され、1990年代、そしてそれに続く21世紀のスーパーカーは、4WDが基本スタイルになるという想像をファンに強く意識させた。

 だが1994年、驚異のスーパーカーが突如、我々の前に姿を現すことになる。

 F1の世界ではお馴染みのビッグネーム、マクラーレンの名前を受け継いだマクラーレン「F1」である。

 当時F1マシンをデザインしていたゴードン・マレーが手がけた初のロードカーで、BMW製の6リッターV型12気筒エンジンをリアミッドに搭載。

 最高出力は627psで、超一流のエアエロダイナミクスを誇るボディとあいまって、最高速度は370km/hとされた(正確なデータは当時未発表だった)。

 RWDの駆動方式を頑なに継承したことやセンターコックピットなど、スーパーカーとしての魅力はまだまだほかにも数多くあった。

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