コロナ禍で変化も? 通勤手段「車 vs 電車」お金・ストレス・移動時間でメリット・デメリットを比較
2020年4月7日に発令された緊急事態宣言により、朝の電車でみられた通勤ラッシュが解消されました。一方で、不特定多数の人と接触する機会を減らせる移動手段として、クルマが注目されています。クルマ通勤と電車通勤では、金銭的・精神的・時間的に、どれほどの違いがあるのでしょうか。
プライベートな空間で、ゆったり通勤は夢物語?
今回は、東急田園都市線の普通・急行列車が停車し、ベッドタウンとしても知られる「青葉台駅」から、約100万人が働く日本屈指のビジネス街の中心ともいえる「六本木駅」まで通勤する場合を例とします。
まずは、電車通勤でかかる時間と費用を計算します。大手乗り換え情報アプリでは、青葉台駅から六本木駅までの所要時間はおおむね50分以内。乗り換えが1度で済む「青山一丁目駅」経由のルートであれば、乗車時間自体は40分以内で済む計算です。
一方、クルマ通勤の場合、一般道で通勤した場合の所要時間は約1時間で、電車通勤と比べると時間がかかります。
神奈川県から東京都心に向かって伸びる「東名高速道路」と「首都高速道路」を利用すれば30分で到着できる計算となりますが、首都高速道路のWebサイトによれば、渋谷につながる路線は平日6時から18時まで混雑する箇所とされており、日によって所要時間が大きく変わる可能性が否めません。
都内に通勤する場合、公共交通機関を利用すると時間の正確性が高く、クルマ通勤は渋滞に左右される部分が大きいようです。
また、料金面も、電車通勤の場合は、青山一丁目駅ルートで片道548円、往復で1096円、定期券を購入すれば1か月で2万1540円。
クルマ通勤の場合、青葉台駅から六本木駅までの距離は一般道であれば約26km、東名高速と首都高を使えば約28kmで、1日52kmから56kmの距離を移動することになります。
そうなると、1か月の通勤を平日20日とした場合の移動距離は1040kmから1120km。国内トップクラスの燃費性能を誇るトヨタ「プリウス」でも、燃費はJC08モードで最高39km/Lなので、レギュラーガソリン価格を120円/Lと仮定すれば、燃料代は3200円から3446円です。
さらに、クルマの場合は保険料がかかり、駐車場が無い場合は駐車場代も計算に入れなくてはなりません。場合によっては、自動車ローンも考慮する必要があるでしょう。
ある自動車保険会社によると、現行型プリウスの保険料は「30歳以上」、「対人・対物事故補償額無制限」、「車両保険無し」、「走行距離無制限」という条件で、約4万6000円。ひと月あたりの支払額は、3833円となります。
また、駐車場代は、青葉台駅のある横浜市青葉区の相場は1万5000円から3万円となっており、安くはありません。
それに加え、高速道路を使えば通行料金もかかります。青葉台駅と六本木駅の最寄りのインターチェンジは、それぞれ東名高速「横浜青葉」 と首都高「渋谷」となるため、片道の料金はETCを利用して1140円、通常料金では2090円。往復で2280円から4180円かかり、ひと月20日間通勤した場合、4万5600円から8万3600円かかる計算です。
1か月の通勤費用を比較すると、電車通勤の定期券代が2万1540円であるのに対し、クルマ通勤は最低でも6万7633円(1か月の駐車場代・保険代・燃料代・ETC代の合計)が必要となります。これは電車通勤の約3倍にあたるコストです。
これらの費用を一律に、「交通費」として受け取ることは、大企業に勤めていたとしても難しいかもしれません。
時間や金額面ではデメリットが目立つクルマ通勤ですが、ストレス面ではどうでしょう。クルマ通勤は、満員電車を回避することが可能です。
田園都市線のラッシュ時の混雑率は180%以上とされており、これはスマートフォンを操作することが困難なほどの密着率だといわれています。
実際に、田園都市線で神奈川県から渋谷駅方面に通勤する会社員は、「場所(駅や乗車する車両)と時間帯によっては、押されて体が浮くこともある」そうです。
青葉台駅から青山一丁目駅までの間には、8駅を通過する必要があり、非常に高いストレスがかかることは容易に想像できると思います。
一方、クルマの場合は、通勤中に車内にいるのはドライバーだけのため、パーソナルなスペースとなり、誰かと密着することもありません。
しかし、先述したとおり交通状況によっては電車ほど時間に正確な移動ができるとは限りません。
また、クルマのなかはプライベートな空間ではありますが、クルマの運転自体は決してプライベートな行為ではなく、ほかのクルマとの関わりが常にあるのも事実です。
時間の遅れや、他のクルマの無理な割り込みなどが結果としてストレスとなり、電車通勤ではあり得なかった「交通事故」というトラブルを発生させる可能性も考えられます。
国際交通安全学会の調査によると、「急ぎ」、「イライラ」、「焦り」といった「感情ストレス」は、狭い車間距離、急激な加減速、スピードの出しすぎといった行動を誘発するとの結果も出ています。
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これまで国内では当たり前となっていた「電車通勤」は、リモートワークやサテライトオフィスの推進、そして新型コロナウイルスという未曽有の危機を経て、変化の節目にあります。
また、プライベートな移動空間として魅力的なクルマ通勤にも、電車通勤とは異なる種類のストレスや、高額な費用が発生することがわかって頂けたのではないでしょうか。
そう考えると、時間に正確に、費用を押さえたい場合は電車通勤、ストレス無く自由度を求めたいならクルマ通勤がおすすめと言えるでしょう。
どちらにもメリットとデメリットがあることを理解した上で、本当に自分に向いている方法はどちらなのかを考えてみてはいかがでしょうか。
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