宇宙刑事ギャバンが乗っていそうなランボルギーニ「アトン」って、どんなクルマ?
必見! 1980年代最新テクノロジーが惜しみなく投入されたアトンのインテリア
アトンでもうひとつ注目すべきは、いかにもコンセプトカーらしいインテリアのデザインだ。
ステアリングは直進時に横一文字で静止するダッシュパネルと一体化するようなデザインの一本スポーク型とされたほか、計器盤にはヴェリアとともに開発したというデジタルメーターが組み込まれていた。
もちろんシリーズ生産を意識したものではなかったため、アトンでは同時代のベルトーネが考え得る限りの先進的なアイデアの集合体となっていたのだが、ディッシュスタイルのアロイホイールの意匠のみは、その後のランボルギーニの市販モデル「ジャルパ」に生かされることになった。
もとよりベルトーネ主導のプロジェクトであったためであろうか、ランボルギーニ・アトンは1980年トリノ・ショーでのお披露目ののちもランボルギーニ側に引き渡されることもなく、ヌッチオ・ベルトーネのコレクションに残留することになったと見られている。
そしてその後は、長らく表舞台に姿を現すこともなかったのだが、ショーデビューから31年後となる2011年、いささか悲しいニュースとともに、再びその存在がクローズアップされることになった。
この年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」に際して、2011年5月24日に行われたRMオークションでは、かねてから破産宣告を受けていたベルトーネ社所有のコンセプトカー・コレクションが一気に競売に懸けられたのだが、そのリストにランボルギーニ・アトンが含まれていたのだ。
この時のオークションでは、1967年製作・発表のランボルギーニ「マルツァル」が151万2000ユーロ、当時の日本円換算にして約1億7000万円で落札されたほか、1978年のランチア「シビーロ」は9万5200ユーロ(約1100万円)、前述のランボルギーニ・ブラーヴォは58万8000ユーロ(約6800万円)、そして1967年のランチア「ストラトス・ゼロ」が76万1600ユーロ(約8800万円)で落札されたなか、ランボルギーニ・アトンは34万7200ユーロ(約4400万円)で落札されるに至ったのだった。
この時点での落札者名は未公表とされ、アトンは再び表舞台から姿を消したかに見えた。ところが、その5年後となる2016年5月28から29日に開催されたコンコルソ・ヴィラ・デステにおいて、今度は「クラスH:Drive by Excess-From Glam Rock to New Wave」カテゴリーに、正式なエントリー車両として姿を現すことになったのだ。
ヴィラ・デステにおけるエントラント名義は、近現代のコンセプトカーを数多く所有することで知られるスイスのコレクター、アルベルト・スピース氏となっていた。同氏はランボルギーニ「ミウラ・ロードスター」も所有し、2014年にはカロッツェリア・ザガートにランボルギーニ「5-95ザガート」をワンオフ製作させたことでも知られる超大物人物である。
いまやランボルギーニがアウディ傘下で栄華を極める一方で、かつて隆盛を誇ったベルトーネは歴史の幕を閉じてしまった。そんな時代だからこそ、両社の絆の証ともいうべきアトンが再び安住の地を得たことには、わずかばかりながら慰めのような感情を覚えてしまうのである。
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