宇宙刑事ギャバンが乗っていそうなランボルギーニ「アトン」って、どんなクルマ?

ベルトーネの事実上の倒産によって、2011年のオークションで4400万円で落札されたランボルギーニ「アトン」。現在はレストアされ、スイスのコレクターによって所有されているアトンは、どんな思いでベルトーネが生み出したのか、当時のエピソードから読み解いてみよう。

ベルトーネが提案した、ランボルギーニの未来のV8ミドシップカー

 1980年秋のトリノ・ショーにてカロッツェリア・ベルトーネが公開したコンセプトカー、ランボルギーニ「アトン」。

 その名にあるアトンとは、古代エジプト18王朝において「アマルナ革命」と呼ばれる宗教改革を起こそうとしたイクナートン(アクエンアテン)こと、アメンホテプ4世が信仰した太陽神「アトン(近年では ”アテン” 表記が多くなった)」の名に因んだものである。

まるで宇宙艇のようなデザインのアトンの特徴がもっとも表現されているのがリアビューだ
まるで宇宙艇のようなデザインのアトンの特徴がもっとも表現されているのがリアビューだ

 アマルナ革命の唯一神である「アトン」の名を与えたのは、このコンセプトカーの開発を主導したベルトーネのアイデアと見て間違いないだろう。

 しかし政治面のみならず宗教面でも最高指導者となったイクナートン自身の急死によって歴史の闇に消えた「アトン」を敢えて冠することには、ベルトーネがランボルギーニに、アマルナ革命のごときまさにドラスティックな変化を求めていたからと推測される。

 ランボルギーニの開祖、フェルッチオが自身の興したスーパーカー専業メーカーの経営から退き、スイス人投資家ジョルジュ-アンリ・ロセッティが率いていた1970年代後半のランボルギーニは、4WDオフローダー「チータ」を北米あるいはNATO加盟各国に正式採用してもらうプロジェクトに失敗。

 独BMW社との合弁事業である「M1」プロジェクトからも見放され、経営破綻を目前としていた。

 一方、同時代のランボルギーニ唯一の生産モデルとなっていたカウンタックのボディの創造主たるベルトーネの社主、ヌッチオ・ベルトーネは男気と人望で知られた人物。しかも彼には、ランボルギーニに襲い掛かった惨状をなんとか打破せねばならないという、ビジネス上の事情もあったようだ。

 この時代のベルトーネは、母国イタリアのフィアットをはじめ、世界中の自動車メーカーのデザインワークを受託。その人気を支えていたのが、ランボルギーニとのパートナーシップがもたらすアバンギャルドなイメージだった。

「フェラーリ=ピニンファリーナ」と同じくらいに影響力のある「ランボルギーニ=ベルトーネ」という図式は護りたかった。それだけに、ベルトーネにはアトンというコンセプトカーをもって、ランボルギーニの健在ぶりを世に示そうとした……というのが、アトン製作に至らしめた経緯の定説となっているのである。

 ランボルギーニ・アトンのデビューに先立つこと6年、1974年に同じくベルトーネがトリノ・ショーにて発表したコンセプトランボルギーニ「ブラーヴォ」と同様、アトンでもベース車両に選択されたのはV8を横置きミドシップするランボルギーニ「ウラッコ」系だ。アトン製作時代ということで、「P300シルエット」が直近のベースモデルとされている。

 トリノ・ショーでの発表に際して公表されたスペックでは「エンジン:V型8気筒3000cc/260ps」「トランスミッション:5速マニュアル」のメカニズムを搭載している旨が示されていたが、これはつまりスタンダードの「ウラッコP300」および「シルエット」のものとまったく同じだった。

 また、ブラーヴォでは2250mmまで大幅に短縮されていたというホイールベースは、アトンでは2450mmというウラッコ/シルエットから不変の数値とされた。これはウラッコ系のモノコック用フロアパンが、そのまま流用されたことを示している。

 しかしアトンを何よりも特徴づけているのは、近未来的なバルケッタスタイルの2シーターボディであろう。デザインワークを担当したスタイリストは、このアトンがベルトーネにおける第一作となったフランス人スタイリストのマルク・デシャン。彼が翌年に手掛けた「マツダMX01」や、1982年の「アルファロメオ・デルフィーノ」、1984年の「シボレー・コルベット・ラマッロ」、あるいは生産化に至ったモデルとしては「シトロエンXM」などのエッジィなデザインにも、独特の共通項が感じられる。

【画像】ランボルギーニ・アトンの珍しい当時の姿を振り返る(8枚)

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