ポルシェ「911（991型）」のターボラインナップのなかで最強の911ターボSを、富士スピードウェイにて全開走行で試してみた。約1.5kmの富士スピードウェイのストレートで、どれだけカタログ値の最高速度330km／hに迫ることができるのだろうか。

　先代モデルとなる991型「911ターボS」は、「911ターボ」ラインナップ中、最強のモデルであった。3.8リッター水平対向6気筒をツインターボ化し、最高出力は580ps、最大トルクは700Nmにも達していた。

　カタログ記載値の最高速度が、330km／hだが、これが眉唾でないことを少し前に某社テストコースで確認していた。そのときは、326km／hを7速5500rpm前後で記録し、まだまだ伸びる余裕を見せていたから、確実に330km／hオーバーできる実力を秘めていると確信。

　富士スピードウェイのストレートは約1.5km。このステージでどれほどの速度に到達するのか興味深い。

　試乗車のトランスミッションは7速PDKで、カーボンブレーキを装着。ブレーキパフォーマンスにも不安のない仕様だ。コースインしてすぐに分かるのは、強固な剛性の車体と遮音と防振に優れた高いNVH性能だ。質感が高く、「GT3RS」より明らかに快適だ。

　ステアリングセンター横に、走行モード設定のダイヤルスイッチが設けられており、サーキット走行に最適な「S＋」を選択した。「S＋」では、PDKの制御を中心にサーキット走行にベストマッチする制御が得られるはずだ。

　コーナー目がけ減速を始めると、PDKはすかさずシフトダウンする。その際、ブリッピングによる回転数制御もおこなわれ、変速ショックはもちろん皆無。さらにブレーキを踏み続けるとシフトダウンが追加され、コーナリングに最適なギアが自動的に選択される。

　また、ブレーキの踏力コンロトールで、シフトダウン段数を自分でコントロールすることもできる。カーボンブレーキは踏力よりもローター温度に依存してミューが高まり、闇雲にブレーキペダルを踏みつける必要がない。そこで生まれる踏力コントロール幅をPDKに情報として伝え、シフトダウン制御にフィードバックしている。

　それだけではない。ヒールアンドトゥよろしく、旋回中でもブレーキを踏みながらアクセルを煽るとブリッピング＋シフトダウンを引き起こす事が可能なのだ。

　左足でブレーキ操作をすれば右足でアクセルを煽ることもでき、様々なドライビングスタイルに適合させている。これはテストドライバーからのフィードバックが相当に大きいはずだ。

　ダウンシフトを伴いエンジンブレーキも強く引き出せるので、コーナリングターンインではブレーキオーバーステア傾向になる。もちろんPSM（ポルシェ・スタビリティ・マネージメント）はオフにしているが、完全オフとはならず、スピンなど最悪なモードでは介入するようだ。しかし、よほどのエマージェンシーでなければ作動しないので邪魔にならない。

　ブレーキオーバーステア傾向は、アンダーステアを弱め、コーナリング速度を高く維持できる。

　最終コーナーをクリアし、ストレートを全開で駆け抜けると、速度計は292km／hに達した。これは速い！　参考までにクロノパッケージ装着のストップウォッチでタイムを測ると1分51秒08が記録されていた。

●PORSCHE 911 Turbo S
ポルシェ911ターボS
・車両価格（試乗車新車時）：2602万3000円
・全長：4507mm
・全幅：1880mm
・全高：1297mm
・ホイールベース：2450mm
・車両重量：1610kg
・エンジン形式：水平対向6気筒ターボ
・排気量：3800cc
・エンジン配置：リア縦置き
・駆動方式：四輪駆動
・変速機：7速PDK
・最高出力：580ps／6750rpm
・最大トルク：71.4kgm／2100-4250rpm
・0-100km／h：2.9秒
・最高速度：330km／h
・燃料タンク容量：68リッター
・サスペンション：（前）ストラット式、（後）マルチリンク式
・タイヤ：（前）245／35ZR20、（後）305／30ZR20