トヨタ、1000馬力級モンスターマシンを量産化! なぜ伝説「LFA」は復活しない?

「LFA」復活の可能性は?

 LFAの製品企画にGOがかかったもうひとつの背景は当然、トヨタF1の存在があります。

 F1のエンジン規定が当時、V10だったことから、トヨタとレクサスでの最上級モデルとしてスーパーカーは、専用開発のV10搭載が必要条件になりました。開発には、往年のトヨタ「2000GT」搭載エンジンでも手を組んだヤマハと連携しています。

 一方で、LFAの販売に大きな期待をかけていたアメリカからは、違う意見が出ていました。コンセプトモデルのLF-Aが登場した後、トヨタ北米営業本部の米国人幹部と意見交換した際、彼は次のように主張しました。

「現行V型8気筒のスーパーチャージャーモデルにするべきだ。そのうえで、価格を12万5000ドル以下に抑えることができれば、販売での勝算がある」

 アメリカでは当時、12万5000ドル(現在のレートで約1370万円)が、ある程度の販売台数が見込める高級車と、限定販売のような超高級スーパーモデルとの価格境界線になるという考え方がありました。レクサスやトヨタに限ったことではなく、販売・マーケティング関係者やディーラー現場での常識でした。

 ですが、このアメリカ案を受け入れてしまうと、LFAはスーパーカーではなく、単なる上級グレードスポーツカーの枠を超えません。開発工数がかかり、販売台数が限定されることを承知で、トヨタ・レクサス本部はV10案で押し切ったといえます。

 LFAは、レクサスのハイパフォーマンスブランド「F」の頂点、という位置付けとしても重要な役割を果たしました。メルセデス・ベンツのAMGやBMWのMといった、欧州プレミアム系への対抗策です。

トヨタ「GRスーパースポーツコンセプト」
トヨタ「GRスーパースポーツコンセプト」

 一方、現在トヨタには「GR」があります。トヨタのハイパフォーマンス系ブランドではTRD(トヨタ・レーシング・デベロップメント)がありましたが、今後はGRとして一元化されます。モータースポーツの実績をダイレクトに商品化する戦略です。

 その筆頭が、WRCとの関わりが深い「GRヤリス」(396万円)であり、「GRスーパースポーツ」なのです。国内スーパーGTでも2020シリーズから、参戦モデルをレクサス「LC」から「GRスープラ」に変更しました。

 LFAの時代と比べて、トヨタとレクサスにおける、モータースポーツと商品化との関係性が大きく変わったのです。

 つまり、LFAの後継車がレクサスから登場する可能性は低いと見るべきでしょうか。いやいや、もしかすると、LCあたりでスーパーモデルが登場するかもしれません。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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