値段も普通の救急車の4倍!? 日本初8000万円超のEV救急車を東京消防庁が導入した理由とは
東京消防庁は日本初の「EV(電気自動車)救急車」を2020年3月末に導入しました。従来のエンジン車と違うだけでなく、ベース車自体も日本ではほとんど見かけない珍しいクルマで、そのうえ値段は一般的な救急車の3倍から4倍にのぼります。東京消防庁は、なぜEV救急車を新たに導入したのでしょうか。
ベースは激レアの日産車!? 東京消防庁がEV救急車を導入した理由とは
東京消防庁は、日本初の「EV救急車」を導入したことを2020年3月31日にSNS上で公表しました。投稿された画像に写るEV救急車には日産のエンブレムと、NV400というバッジ。その下には日産「リーフ」と同じ『Zero emission』のバッジもついています。
しかしこのNV400は、日本ではあまり見かけない珍しいクルマです。東京消防庁は、なぜ電気自動車のNV400をベースとしたEV救急車を導入したのでしょうか。
このNV400、右ハンドルではありますが日本では販売されていない車種です。また、顔つきをみても日本で一般的に救急車として使われている「NV350キャラバン」とは違う系統の顔をしています。
じつはNV400とは日産が製造する車両ではなく、提携先のルノーが生産するLCV(大型商用車)であるルノー「マスター」のOEM車で、英国日産がイギリス国内で販売する車両です。全長約5.6m×全幅約2.1m×全高約2.5mと、欧州ではもっとも大きな商用車のクラスに属します。NV400は2010年のハノーファー(ドイツ)モーターショーで発表されました。
ですが、英国日産で販売されるEVは、リーフとNV200のEVモデルである「e-NV200」の2車種のみ。NV400にはEV仕様が存在しないのです。
日産からの正式な発表は5月以降とのことで、詳細は明らかになっていませんが、マスターには「マスターZ.E.」という電気自動車のグレードがあり、こちらをベースにNV400として日産仕様に改装されたのではないか、と推測されています。
さらに、現在、欧州で販売されているマスターは3代目モデルですが2019年4月に大幅なフェイスリフトをおこなっており、顔つきはまったく異なっています。今回、導入されたNV400のEV救急車は、2019年4月のフェイスリフト前の旧型マスターZ.E.がベースと考えられます。
ところで、なぜこのタイミングで東京消防庁はEV救急車を導入したのでしょうか。
東京消防庁への取材やすでに発表されている報道資料、および関係者への取材で分かったことをまとめた結果、EV救急車導入の背景や、具体的なスペックが判明しました。
まずEV救急車を導入した目的は、東京都が2050年までに実現を目指す「ゼロエミッション東京」に向けた活動およびその準備の一環だということです。東京都として、今後は救急車以外にもさまざまな公用車において、EVなど環境に配慮したクルマを導入していくといいます。
そして、EV救急車は2019年5月に発足した池袋消防署の「デイタイム救急隊」(後述)のなかで運用されます。運用時間は原則として平日の8時30分から17時15分までの間で、夜間は充電の時間に充てられるということです。
33kWhをフル充電するために掛かる時間は8.5時間。一充電あたり、JC08モードの計算で約130kmの走行が可能です。
そして、消防救急車として初めて「電動ストレッチャー」を搭載していることも大きな特徴となります。電動ストレッチャーは、体格の大きな外国人や重体重の傷病者への対応力を強化するとともに、隊員の負担を大幅に減らす効果があり、欧米では電動ストレッチャーの普及が進んでいます。
電動ストレッチャーなど大型の装備を導入することもあり、より広いスペースを持ったクルマが必要とされたことで、今回の導入となりました。
活躍しないほうがいいんだよ。