カクカクしたボディが懐かしい! ボルボが手掛ける「クラシックガレージ」とは
信頼性と耐久性の高さの象徴がブランドの価値を高める
そのきっかけは、ボルボ・カー・ジャパンのかつての社長であった木村隆之氏(2020年3月退任)の愛車P1800のレストアだった。その作業を任されたのが、自身も古いアマゾンに乗っていたという阿部さんだったのだ。そして、きれいになったP1800とともに、いろいろな旧車系のイベントに参加。そこでオーナーの声を耳にする。
「修理する場所があまりないんですね。あと、新車ディーラーにも行きづらいと」と阿部さん。
たとえ新車でディーラーから買ったとしても、あまりにクルマが古くなると、だんだん行きづらくなるというのだ。ましてや中古車で手に入れたオーナーなら、なおさらなこと。また、メルセデス・ベンツ日本が、同様に古いクルマを対象として「ヤング・クラシックリフレッシュプログラム」を開始したのも後押しになったという。
「メルセデス・ベンツさんができるなら、うちでもやってみたいという部分もありました」と阿部さん。
また、ボルボが、こうした古いクルマの修理/リフレッシュを手がけるには、有利なところもあった。それはボルボが古いクルマの部品の多くを、今も生産し続けているからだ。
「古いものになると1950年代からあります。逆に、1990年代後半の方が少ないくらいですよ。それにボルボは小規模なメーカーですから、いろいろな車種に、共通する部品を使っているんですよ」
さらにボルボのクラシック・ビジネスの追い風となるのが、そのブランドの立ち位置だ。プレミアムに近いけれど、そこまでではない。リフレッシュしたクルマでも、新車当時の価格までが上限。つまり手の届く価格になる。これがプロジェクトの好調さの理由のひとつでもあろう。
レストアで商品化された車両の価格は、「240セダン」や「940エステート」なら200万円台前半、人気の高い「240ワゴン」が300万円台といったところだ。
個人的には、240あたりのクルマであれば、作りがシンプルで故障しても修理費はそれほど高額にならないだろう。ヒストリックカー入門にぴったりなのではないだろうか。
とはいえ、どんなクルマもあるわけではないとか。
「1980年代のクルマは、ほとんど国内市場にはありませんね。でも、1990年代ならありますし、リフレッシュすれば常用で使うことができます。また、古い部品がすべてあるわけでもないんですよ」
しかし、国産車の新車と、それほど変わらない価格で手に入るというのは嬉しいところ。また、「ドイツ車と違うスカンジナビアデザインを楽しんでほしい」と阿部さんが言うように、古くても最新モデルに通じるボルボのテイストは存在する。それを楽しめるのであれば、古いクルマでも胸を張って乗ることができるだろう。
クラシック・ボルボという存在は、ボルボの信頼性と耐久性の高さの象徴でもある。こういったクラシックビジネスは、それほど儲かるものではないだろう。しかし、古いクルマを大切にする、その姿勢こそが、ブランドの価値を高める。古いボルボに乗って、ブランドというものの価値をあらためて感じることができた取材だった。
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