車の整備が2020年4月から複雑化? 整備費の高額化招く「エーミング」とは
2020年4月から新しい自動車整備制度がスタートし、従来おこなわれてきた「分解整備」から、範囲を拡大した「特定整備」として整備内容が改められます。これにより、クルマの整備費用が高額化することが考えられるほか、小規模な整備事業者が廃業することも懸念されます。2020年4月から、自動車整備はどのように変わるのでしょうか。
小規模自動車整備業者に大打撃? 新たに始まる「特定整備」とは
自動車業界で“アフター”と呼ばれる、修理業や補修部品製造・販売業の関係者から、「(2020年)4月から始まるのですが、さて、これからいったいどうなることやら」という言葉をよく聞きます。彼らが話題にしているのは、新しい自動車整備制度と関係する「特定整備」です。
一般ユーザーの多くは整備についてあまり関心はないと思いますが、今後はクルマの修理コストが上がったり、または修理期間が長くなる可能性もあるといいます。特定整備とは、いったい何を指すのでしょうか。
これまで、自動車の修理は、エンジンやミッションなどの駆動系、板金、塗装に関することがほとんどでした。部品を取り外して整備することから、国はこれを「分解整備」と呼びます。
一方で、最近の自動車に標準装備されるようになった、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)や、アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置など、高度な運転支援システムの整備については、分解しなくても、ソフトウェアを書き換えるなどの作業で、自動車の性能や安全性に大きな影響を及ぼします。
また、バンパーに赤外線センサーが埋め込まれていたり、ルームミラーの後ろに画像認識用のカメラが装着されているため、バンパーやフロントガラスの交換で、センサーが正確に作動するどうかの確認が必要になります。
そのため、従来の分解整備だけでは、整備が不十分になるとの判断に至ったのです。
特定整備とは、分解整備にこうした「電子制御装置整備」を加えた整備全体を指します。また、後述しますが、ここに「自動運転装置」が加わります。特定整備による、新しい自動車整備制度は2020年4月に始まります。
特定整備に対応するため、修理事業者に必要なことは、整備するための場所と人、そして専用機器の導入です。
ここでのキーワードは、「エーミング」です。カメラの光軸やセンサーの検知範囲など、センサーの機能を調整することを指します。
エーミングをするための作業場の広さは、普通自動車(大型)から小型二輪車や軽自動車まで8つに分類されています。例えば、普通自動車(大型)の場合、奥行き16m×幅5m、で、このうち屋内部分が奥行き7m×幅5m、かつ十分な高さが必要となります。
だたし、自動車メーカーや車種によって、高度な運転支援システムの機能や性能に差があるため、実際のエーミングに必要な寸法は違います。
専用機器は、車載コンピュータのデータを検出するOBD(自己診断機能)機器を使います。こうした機器も自動車メーカーで指定品が違う場合があります。
このように、場所とモノに加えて、作業は2人以上が義務付けされているなど、特定整備にはなにかとお金がかかります。
これらコストや作業時間は、一般ユーザーに直接、または間接的に、跳ね返ってくることになります。
また、資金力のない小規模な自動車修理工場にとって、特定整備は死活問題になりかねません。
筆者(桃田健史)は全国各地の自動車修理事業者の会合で意見交換することがありますが、そのなかで、特定整備の話が具体化する前から、OBD導入などによるコスト増、電子制御系の整備に対するスキル不足、そして後継者問題などから「近い将来、廃業を考えている」という声を小規模業者から聞くことが度々ありました。
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