自動でウイーン… なぜ電動ミラー普及した? ドアミラーの進化が止まらないワケ

今ではどんなクルマにも当たり前のように搭載されている電動ミラー。どのような背景で開発され、いつ頃から一般に広まっていったのでしょうか。

電動格納ミラーはいつ登場したのか

 今では当たり前のように装備されている電動式のドアミラー(以下、電動ミラー)。このように一般的な存在になったのは、いつ頃なのでしょうか。

今では電動ミラーが当たり前の装備となった
今では電動ミラーが当たり前の装備となった

 現在、安価な商用車を除けば、ほとんどのクルマのドアミラーは電動化され、全体の96%が電動ミラーを装備しているといわれています。

 電動ミラーがはじめて国産車に採用されたのは、1984年に発売された日産の5代目「ローレル」だといわれています。当時のローレルは、ミラーがフロントガラスよりも前に位置する「フェンダーミラー」であり、現在主流の「ドアミラー」よりも死角が少ないと考えられていました。

 しかし、フェンダーミラーを調整・格納するには一度車外へ出る必要があり、利便性に劣っていました。当時の光景を知る人によれば、駐車場で「ミラー合わせをしましょうか?」と声をかけ合うこともあったといいます。

 こうした手間を解消するために、電動ミラーが採用されていきました。ミラーの電動化について、精密部品製造メーカーの担当者は、次のように話します。

「1980年代にミラーが電動化できたのは、それを動かす電動モーターやアクチュエータの小型・高性能化が背景にあったのではないでしょうか。実際にミラーを手に持ってみると分かりますが、単体でも結構な重さがあります。あれだけの重さの部品を動かすには、電動モーターにも相応のトルクが必要になります」

 電動格納ミラーの開発背景には、こうした利便性のほかにも、「フェンダーミラー」と「ドアミラー」を巡る自動車市場のグローバル化が関係していました。

 日本では、かつて道路運送車両法の規定により、「ボンネットの付いたクルマは、フェンダーミラーしか装着できない」と定められていました。つまり、ドアミラーのクルマは法律違反という扱いだったのです。

 当時の日本では「ドアミラーはフェンダーミラーに比べて死角が多い」と考えられていたため、法令によってドアミラーに規制がかけられていましたが、日本以外の国ではすでにドアミラーが主流になっていました。

 そのため、ドアミラーを認めない法令を持つ日本に対して、国外の自動車業界から規制撤廃が求められ、ドアミラーを1983年より解禁し、日本でもドアミラーのクルマが普及するようになっていきました。

 例えば、1983年から1987年に販売されていたトヨタの7代目「クラウン」や、1983年から1999年に販売されていた日産の6代目「セドリック」も、フェンダーミラーとドアミラーが混在しています。

 しかし、ドアミラーへ移行してきたことにより車幅が広がったため、日本の狭い道路では、車同士のすれ違いの際に邪魔になったほか、停車中に歩行者がドアミラーにぶつかったりすることがあったといわれています。

 電動ミラーは、こうした「フェンダーミラー」から「ドアミラー」への移行や、それに伴う「歩行者への配慮」といった理由があったようです。

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