トヨタには敵わない!?「シエンタvsフリード」小型ミニバン対決の行方は?

トヨタの強みは巨大な販売網にある?

 トヨタの凄さは、このようにクルマの売れ行きにメリハリを付けられることです。2019年は日本国内で売られた小型/普通車の46%がトヨタ車で、販売店舗数も4系列を合計すれば、日産やホンダの2倍以上となる4900店舗に達します。

コンパクトなボディでスライドドアを備えたトヨタ「シエンタ」
コンパクトなボディでスライドドアを備えたトヨタ「シエンタ」

 2019年9月のシエンタの登録台数は1万3558台で、対前年比が1.9倍だから前年に比べて6244台増えましたが、いまのシエンタは全店が扱っています。各店舗が前年に比べてシエンタを1台多く登録すれば(自社の試乗車や社用車を入れ替えても良い)、それだけで4900台の上乗せになるのです。

 こういった一種の販売操作は、不人気車には通用せず、人気車でも長期間にわたり持続させることは不可能です。しかし短期間に限ると、トヨタであれば売れ行きを伸ばせるというわけです。

 たとえば2007年9月に、トヨタは「マークXジオ」という天井の低い3列シート車を発売しました。3ナンバー車で価格も300万円前後と高く、3列目がかなり狭くて荷室も使いにくいモデルでしたが、発売直後の1か月間には、マークXジオが8000台を受注したのです。

 発売時の月販目標は、セダンの「マークX」を含まないでジオだけで4000台としていたので、2倍の受注があったことになります。

 マークXジオの販売店はトヨペット店のみだから、全国に約1000店舗あります。1店舗平均8台だが、短期間であれば、トヨタならこのような売り方もできるでしょう。

 なお、発売から3年を経た2010年頃の登録台数は、1か月当たり500台から600台に低迷。2013年に販売を終了しました。

 2008年に発生したリーマンショック以降のトヨタは、良くいえば市場動向に従った売り方になり、販売に対する強い意思を感じる機会が減りました。その意味でシエンタの販売動向には、国内市場に向けたこだわりが感じられて懐かしく思えたのです。

 一方フリードの販売好調は、2019年10月に実施されたマイナーチェンジの効果もありますが、シエンタのような目立った動きはないです。マイナーチェンジの前後とも、各月の対前年比は横這いか増加しても1.1倍。シエンタのように1.6倍から1.9倍に達することはありません。

 それでもフリードが注目されるのは、1.5リッタークラスのエンジンを搭載するコンパクトミニバンが、シエンタのほかはフリードしか用意されず、堅調に売れているからです。

 2019年は「フィット」がフルモデルチェンジを控えてモデル末期だったこともあり、ホンダの小型/普通車のなかでは、フリードが最多販売車種になりました。

 いまのホンダは、フリードの約3倍売れている「N-BOX」に、販売力を奪われている状況です。

 フリードはSUV風のクロスターを追加しており、シエンタと違って車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどの運転支援機能も備えて、全高が1700mmを超えるボディによって外観デザインのミニバンらしさも濃厚です。

 シエンタとは違う魅力を備えるコンパクトミニバンとして、メーカーと販売店がフリードに力を入れると、売れ行きをさらに伸ばせるでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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