エンジン内の液体があまーい! 人体に猛毒の「クーラント」の正体とは
クルマのエンジンを冷却するための液体「クーラント」は、甘い匂いを発します。それはなぜなのでしょうか。
クーラントの発する「甘い匂い」の正体とは
クルマのエンジンを冷やすための冷却水には、水ではなく「クーラント」という液体が使われます。この液体は飴菓子のような甘い匂いを発しますが、人やクルマにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
エンジンルーム内に、「赤」や「緑」など綺麗な色のついた液体が入っているタンクのを見たことはないでしょうか。その液体こそがクーラントです。
クルマのエンジンは、動いているときに高温になります。その熱を効率的に取り除くためにも、「クーラント」という冷却水が欠かせません。
あるエンジンオイルメーカーの調査によれば、動いているエンジン内部の温度は、エンジンの中心ともいわれる「コネクティングロッド」という部品で約90度から約200度となり、燃料が燃える「燃焼室」では約1500度から約2800度という非常に高い温度になっています。
そのような高温のエンジンを冷却するクーラントとは、どのような液体なのでしょうか。あるカー用品販売店のスタッフは、以下のように話しています。
「クーラントは、クルマのエンジンを冷却する専用の液体です。エンジンにはエンジンオイルだけではなく、冷却水も必要で、クーラントがなければ、エンジンは熱を逃がすことができず『オーバーヒート』となって壊れてしまいます。
冷却水にクーラントを使うのは、氷点下になっても凍らないためです。水道水では氷点下になると凍ってしまうため、エンジンをかけると壊れてしまいます。
クーラントが漏れると『甘い匂いがする』というお客さまもいますが、これは、クーラントの不凍液の成分によるものです」
さまざまな薬品を取り扱う、三菱ケミカルホールディングスグループによれば、不凍液の成分は「エチレングリコール」というもので、「自動車用不凍液としてよく用いられる」と紹介されています。また、特徴として「常温で粘り気があり無色無臭で甘みのある液体」ともあります。
このエチレングリコールこそが、甘い匂いの正体です。前出のカー用品店のスタッフは、エチレングリコールの特徴について、以下のようにも話します。
「クーラントを冷やすラジエターなどから、クーラントが漏れることがあります。温められたクーラントが漏れると、揮発して砂糖菓子のような甘い匂いを出すため、それが車内に入り『甘い匂いがする』と相談に来るお客さまもいます。なかには、車内で飲み物をこぼしたのかもしれないと心配になるお客さまもいらっしゃいました」
クルマを運転する人でさえ、飲み物と誤ってしまうほどの甘い匂いを出すクーラントですが、では、実際に口にするとどうなるのでしょうか。
ある動物病院によれば、「エチレングリコールをペットが飲んでしまい、エチレングリコール中毒を起こした」という例があります。
エチレングリコールはクーラントのほかにも、不凍液としての性質を活かして、「アイスノン」などの冷温用品にも使われています。
甘い味がすることから、ペットが誤飲・誤食するケースもあり、もし飲んでしまった場合は、嘔吐や下痢といった中毒症状が起こります。重度になると昏睡や失神などを引き起こし、最悪の場合死に至ることもあるようです。
昔、80年代に甘さを増すためにエチレングリコールを混ぜたワインが流通した、という事件があったが・・・