なぜディーゼルの信頼回復? 石原元都知事に悪者にされた復権の歴史

かつて石原元都知事は、黒い粒子が詰まったペットボトルを見せて、ディーゼル車による環境の悪影響をメディアを通じてアピールした結果、世間的にはディーゼル車に対する悪いイメージが定着しました。しかし、現在ではマツダや三菱が積極的にディーゼル車を投入するなど、当時とは真逆の良いイメージが付きつつあります。なぜディーゼル車は信頼回復できたのでしょうか。

かつてディーゼル車は黒煙をまき散らしていた?

 かつて黒煙やススを出して走る印象が強かったディーゼルエンジンですが、現在では低燃費なうえ月々の燃料費も抑えられるという良い印象が定着化してきました。

 これまでに、ディーゼルエンジンに関するさまざまな規制が実施されてきたなかで、どのようにして印象を復活させてのでしょうか。

かつてトラックのディーゼルエンジンといえば黒煙を撒き散らすという印象があった
かつてトラックのディーゼルエンジンといえば黒煙を撒き散らすという印象があった

 ディーゼルエンジンは、ガソリンよりも経済的な軽油を使用し、大きなトルクを得られることから、トラックやバスなど大型のクルマに使われています。

 1999年、当時の東京都知事だった石原慎太郎氏が、黒い粒子が詰まったペットボトルを見せました。その中身はディーゼル車の出した煤煙などとされ、これをきっかけに、ディーゼルエンジン車を規制する「ディーゼル車NO作戦」がスタートしました。

 当時のディーゼル車のなかでも、トラックやバスなどのマフラーから排出される黒い煙には、主にふたつの有害な大気汚染物質が含まれていたとされています。

 ひとつは「PM」と呼ばれる粒子状物質、ふたつめは「NOx」と呼ばれる窒素酸化物です。PMは燃焼時に発生する粒上の物質で、光化学スモッグの原因ともいわれています。

 NOxは、高温になると発生しやすくなり、大気汚染の原因ともいわれています。ディーゼル車NO作戦は、これらのPMとNOxなどを減らす目的で進められました。

 東京都環境局によれば、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(東京都環境確保条例)」を定め、国に先立つ形で厳しいディーゼル車の規制をおこなったとされています。

 東京都のディーゼル車規制は2003年10月から実施され、トラックなどの「貨物自動車」、バスやマイクロバスなどの「乗合自動車」、コンクリート・ミキサー車などの「特種用途自動車」が規制の対象となり、条例で定める基準を満たさないディーゼル車は、東京都内の走行を禁止されてしまいました。

 その後、ほぼ同様の規制を、埼玉県、千葉県、神奈川県が実施し、ディーゼル車のイメージは、良いとはいえないものでした。国土交通省によれば、ディーゼル車に関する規制は、2005年に「新長期規制」、2009年に「ポスト新長期規制」が実施され、最近では2015年に排出基準のさらなる強化が実施されました。

 しかし、自動車メーカーでは新技術の開発や投入によって、これらの規制をクリアしています。

 ディーゼル車ではPMとNOxを同時に低減することは難しいとされています。PMは高い温度で軽油を燃焼させれば処理できますが、NOxが発生しやすくなります。逆に低温で燃焼させればNOxが減る代わりにPMが出てしまいます。それを解決するため、NOxを減らす尿素SCRと呼ばれる装置や、PMを減らすDPFという装置が開発されました

 また、ディーゼル車の燃料である軽油には、硫黄が含まれています。硫黄は、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)へ悪影響を及ぼすともされており、そのため硫黄の含有率を下げる改質の取り組みもおこなわれています。出光興産では、2005年の新長期規制に先がけて、2003年より低硫黄軽油を製造していたとされています。

※ ※ ※

 高度経済成長期、東京では青空が見えないほどの光化学スモッグに覆われることもあったとされています。

 ディーゼル車は、そうした大気汚染の原因のひとつとされ、石原慎太郎氏の黒いペットボトルと共に、「環境に悪いクルマ」と印象付けられました。

 しかし、自動車業界や燃料業界は、排気ガスに関わる課題を解決し、現在では黒煙を出すディーゼル車はほとんど見られなくなったのです。

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2件のコメント

  1. ガソリンなんて昭和の規制から放し飼いなのにね。
    質の悪い日本の軽油で走るトラックに厳しい規制で浄化装置などによる車両価格上昇、こちらの損失のほうが大きいのではないかな?
    浄化装置のシステム重量で損なわれる積載量やら、ドライバー不足に火を点けて油を注いだのは明らかに政の陰謀だろ。

  2. また、ガソリンと軽油の価格差が以前より小さくなっているため、長距離を移動される人ほど元が取れるため、ディーゼルエンジンのメリットが大きいです

    燃料の価格差が小さくなっているなら、メリットも小さくなっているのでは?

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