アイボ開発担当が「ソニーでもクルマは作れる!」わずか2年で実走行レベルに EV見せたソニーの狙いとは
2020年1月7日から10日にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大のエレクトロニクス見本市「CES2020」に、ソニーが電気自動車(EV)を展示、その完成度の高さに「ソニーがEVに参入?」と世界中で話題となりました。実際に走行できるEVをソニーがCESに出展したその理由はなんでしょうか。
GRスープラも手がけるマグナが担当した車両は完成度が高い
ソニーは、米国・ラスベガスで開催された「CES 2020(開催期間:2020年1月7日~10日)」で、電気自動車(EV)の試作車「VISION-S(ビジョン・エス)」を初出展しました。
2010年代に入ってCESは、自動車メーカーによるEVや自動運転にまつわる新技術を発表する場へと変貌していました。ソニーはそうしたCESにふさわしい取り組みを発表して世界を驚かせたのです。
VISION-Sは、ソニーが自動車を含むモビリティ分野での新たな取り組みを、わかりやすくアピールできることを目的としたコンセプトEVです。
開発に携わった担当者によれば、「各センサーを机の上に並べていただけではメリットや、使い方などをイメージしてもらいにくい。より具体的な事例を説明できる材料が欲しかった」と説明します。しかし、車両の開発となればソニーだけで実現できるものではありません。
そこで白羽の矢が立ったのが、自動車部品の大手サプライヤーであるマグナインターナショナル(以下:マグナ)でした。
同社は完成車生産受託を手がけるメーカーで、トヨタ「GRスープラ」もここで生産されていることでも知られています。犬型ロボット「aibo(アイボ)」の開発にも携わった経験があるソニーの担当役員がこのマグナの生産現場を視察し、それをきっかけに「ソニーでもクルマは作れる」と判断し、開発はスタートしたのだそうです。これは2018年初頭のことだといいます。
開発にあたっては、全体のデザインをソニーがおこない、それに基づいてマグナが完成車までを担当。マグナが必要なサプライヤーをまとめ上げることで、わずか2年で実走行できるレベルにまでこぎ着けたというわけです。その意味でVISION-Sはマグナの協力なくしては実現でき得なかったプロジェクトだったとも言えるでしょう。
しかし、開発の目的にあったように、VISION-Sにはソニーならではの取り組みが随所に採り入れられています。
自動運転の到来を見据えた「Safety Cocoon」コンセプトをコアに、車載向けCMOSイメージセンサーを中心に、計33個のセンサーを車内外に搭載。これによって、「霧や夜間など、視界不良な状況で走行しても、周囲360度にわたってセンシングしながら安全な走行を徹底して追求できた」(ソニー担当者)としています。
搭載した計33個のセンサーの内訳は、カメラ×13個、レーダー×17個、ソリッドステート型LiDAR×3個が含まれます。そのうち、カメラ×13個とソリッドステート型LiDAR×3個はソニー製で、見逃せないのはこのソリッドステート型LiDARの分野でもソニーの参入が明らかになったことです。
じつは、カメラに使うイメージセンサーで、ソニーは金額ベースですでに5割を超える(2018年度)シェアを持っており、自動車への搭載率でもソニー製が採用される事例は急速に高まっています。
ただ、形状や色の認識で優位性はあるカメラも、霧や暗闇などで視界不良となれば、センシング能力は一気に下がります。現在はこうした条件に強いことで多用されているミリ波レーダーも、反射率の低い人間や物体には反応しにくいのが現状です。
そこで、これらの弱点を補完できるLiDARを組み合わせる“センサーフュージョン”が自動運転の実現には欠かせなくなっているというわけです。
しかし、LiDARは部品価格が高価であることから、普及率はほぼゼロの状態。そんな状況の下、イメージセンサーで高度な技術を持つソニーなら、生産性を上げることでLiDARの価格を引き下げることも夢ではありません。
LiDAR生産が軌道に乗れば、カメラと一体化したユニットの開発も容易となり、センサーフュージョンの大幅なコスト引き下げにつながることでしょう。この将来有望なLiDARの分野へソニーが参入するにあたり、よりわかりやすい形で提案できるVISION-Sの開発は欠かせなかったともいえるのです。
これによってもたらされる自動運転レベルは、運転支援の「レベル2」で、将来的には緊急時も自動車側に操作を委ねる「レベル4」をクリアすることを前提に設計しているとのことでした。
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