旧型カローラも需要がある!? 新型カローラ登場後も旧型モデルが併売される意外な理由とは
新型が登場した後の旧型カローラの売れ行きは?
日本自動車販売協会連合(自販連)が発表した2019年10月の登録車の販売ランキングにおいて、カローラは1万1190台を登録して、ランキングトップを獲得しました。
この1万1190台には旧型のアクシオとフィールダーの台数も含まれているのですが、旧型はどの程度の売れ行きなのでしょうか。販売店スタッフは次のようにいいます。
「新型カローラが発売された直後なので、アクシオとフィールダーを求めるお客さまは少ないです。それでも法人のお客さまの場合、価格を安く抑えた5ナンバー車を求めることが多いので旧型も必要です。
また高齢のお客さまでは、ディスプレイオーディオが必要ないという人もいます。自宅付近の移動がほとんどだから、ラジオが付いていれば十分、というお客さまも少なくありません。
アクシオとフィールダーは視界も良くて運転しやすいので、必要に応じて提案しますが、EXはハイブリッドでないとエアコンがマニュアルになってメッキパーツもほとんど付きません。安っぽいという指摘もあります。以前の『1.5G』に相当する上級グレードが欲しいです」
旧型のアクシオ&フィールダーにも相応の需要がありそうですが、EXは法人向けと割り切ってシンプルな仕様にしているため、ユーザー層を狭めているようです。
カローラは2019年10月に1万1190台を登録しましたが、2018年10月と比べると前年対比129.5%、30%上乗せされています。
トヨタが発表した月販目標台数は、セダンが1700台、ツーリングは5400台、2018年6月から設定されているスポーツは2300台で、合計9400台です。
この目標は平均値なので、発売から数年を経て売れ行きが下がったときのことまで考えると、発売当初は目標以上の台数を売る必要があります。
この実績をどのように評価するのか、トヨタの商品企画担当者に尋ねました。
「カローラの受注状況を見ると、当初予想したよりも、売れ行きは大人しいです。新型の販売比率は、ツーリングが70%、セダンが30%です。お客さまの内訳は、新型になってもセダンの半数近くは法人が占めています」とコメントしました。
これまでカローラは、「クラウン」などと同様に、既存のユーザーが乗り換えやすいフルモデルチェンジをおこなってきました。しかし新型カローラは、かなり印象の違うクルマになっています。
路線を変えた現行クラウンにも当てはまることですが、ユーザーが戸惑ったり躊躇している面はあるでしょう。
国内向けのカローラは、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)をカローラスポーツと同じ数値に抑えて小回り性能の悪化を抑え、先代「プリウス」と同じ全幅1745mmにするなど、3ナンバー車としながら相応に気を使って開発されています。
そして先に述べた通り、走行安定性から運転支援機能まで、商品力は大幅に進化しました。今後はこのアピールを入念におこなうと同時に、ディスプレイオーディオが非装着で、好みのディーラーオプションを選べる仕様を用意するなど、従来型のユーザーが乗り替えやすいように配慮することも大切です。
また販売店スタッフが述べた通り、カローラアクシオとフィールダーに、1.5Gに準じた上質なパッケージオプションを設定する必要があるかも知れません。
あるいはカローラEXを旧型の継続版ではなく、安全性の優れた「ヤリス」のセダンに置き換える工夫も求められるでしょう。
かつての「ヴィッツ」をベースにしたセダンの「プラッツ」や「ベルタ」は、5ナンバーサイズのカローラセダンがあったから目立ちませんでしたが、いまなら存在感を発揮できます。
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トヨタの特徴は、常にユーザーに寄り添った商品開発と販売をおこなうことです。メーカーからの提案も重要ですが、トヨタはユーザーの希望を汲んだ展開を続けることで、小型/普通車市場において50%近いシェアを築きました。
カローラはそのようなトヨタ車の代表ですから、今後もユーザー目線の開発と販売を続けていくと思います。いまのカローラをそこに向けた出発点に位置付ければ、販売目標もクリアできるでしょう。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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