コペンよりも楽しい! 新型「コペン GR SPORT」は良い意味で裏切られるクルマだった!
ダイハツの2シータオープンカーの「コペン」をトヨタのレーシングカンパニー「TOYOTA GAZOO Racing」が専用チューニングを施したのが新型「コペン GR SPORT」。今回は、標準モデルから大きく変わったポイントを自動車ジャーナリスト・国沢光宏氏が試乗レポート!
コペンのGR仕様が登場!
ダイハツの「コペン」というクルマ、2002年にデビューした直後に試乗しただけで、その後は一度もハンドルを握ったことがなかった。
理由は簡単で、「楽しい」と感じなかったからです。そもそも古今東西オープン2シーターのFFで成功したクルマなど無いです。
ロータスですらFFの「エラン」は失敗作になりました。FRかMRというのがオープン2シーターの条件でしょう。
加えてクルマの質感も足りなかったと思います。補強不足のためかボディの剛性感が低く、走り出したらずっとグラグラ揺れている感じで、サスペンションも突っ張る感じです。
ダイハツの熱烈なファンでない限り、ホンダ「S660」と迷ったらコペンのアピール度は高くありません。ということで、今回の新型「コペン GR SPORT」に対してもまったく期待しないでハンドルを握り、試乗します。
すると「あらら?」。いままでのコペンとまったく違い、楽しいのです。アクセル踏むと3気筒エンジンだと思えないほど気持ち良い音を出します。
さらにボディの剛性感も圧倒的に高くなった感じで、もちろんブルブル感は残っているけれど、気にならないレベルになりました。サスペンションもしっかり動いていて、乗り心地が良いです。
屋根を開け、最近お気に入りのアメリカンポップスを鳴らしながらマニュアルミッション車で海沿いの道を走ってみたら、けっこうな気持ちよさだったりするかもしれません。
ポンポンと跳ねる感じがしなくなったため、気持ち良くクルージング出来るのです。GRというからガチガチの足回りをイメージしていたら、良い意味で裏切られました。
続いてワインディングロードを試します。じつはこのクルマ、コペンでラリーに出場している人が開発を担当しています(試乗会の2日前、私も同じラリーに出場しました)。
御存知の通りラリーという競技は、いろんなタイプの路面を走るため、高いバランスが要求されます。その担当者が「頑張りました」といってたため、少しばかり期待していました。
いつも味見に使っているコースで走らせてみると、「なるほど! 楽しい!」。FRやMRは、限界時のコントロール性を良くするのが少しばかり難しいです。
パワーがあればアクセルを踏んでテールをコントロール出来るのだけれど、軽自動車のパワーだと無理です。また、ロールするとイン側の接地荷重が減るため、ホイールスピンしてしまいます。
コペン GR SPORTの素晴らしさは、イン側タイヤのホイールスピンを抑えるLSDを5速MT車に標準装備している点にあります。タイトなコーナーでハンドル切りながらアクセル踏むと、ちょうど良い感じでLSDが効くのです。ハンドル切った方向にフロントを引っ張って曲がる感じで、効き過ぎると違和感あるし、効かなければ意味無し。絶妙の利き具合です。
高速コーナーの安定性もステキです。適度にしなやかにロールしてくれるため、素直に曲がっていきます。「なるほど! ラリードライバーがセッティングしたクルマですね」、と合点がいきました。
興味深いことに、ビルシュタインのダンパーを採用しているコペン(Sグレード)に勝るとも劣らないハンドリングだったりします。レカロのシートとMOMOのステアリングも良いです。
唯一の「なんでやねん!」は、マニュアル仕様(243万5000円)の方がCVT仕様(238万円)より高価なことで、百歩譲って専用設計の6速MTであれば理解出来るけれど、5速MTです。
ただ悔しいかな、乗って楽しいのはCVTよりマニュアルです。買うならLSDの利きがハッキリ味わえ、エンジン音を一段と楽しめるマニュアル仕様をおすすめてしておきます。
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。
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