一度撤退したのになぜ販売好調? トヨタ「RAV4」がSUV人気N0.1に返り咲いた理由
今後もSUV人気はまだまだ続く?
オクタゴン(八角形)を基調としたデザインは、北米ではお馴染みのものです。トヨタが北米市場で展開しているピックアップトラックの「タコマ」や「タンドラ」、フルサイズSUVの「セコイア」などが八角形グリルを採用しています。
しかし、RAV4はさらにそれを深化させた形状で、勝負をかけてきました。前後横、さらには上から見ても八角形のボディデザインは、北米ユーザーだけでなく、世界のSUVファンの心を捉えることに成功しました。

世界中にファンが多い「ランドクルーザー」に悪路走破性で肉薄した点も、ヒットの要因のひとつといえます。激しいモーグル地形や泥濘地、岩を走行するのには限界がありますが、ダートや雪道などでは負けていません。
しかも電子デバイスがイージードライブを実現しているので、ドライバーのテクニックに関わらず、楽しく操ることが可能です。
とくに、ボディデザインもラギッドに振った「アドベンチャー」グレードは、高次元の悪路走破性を持ち合わせています。そしてそれもまた、既存のSUVに飽き始めていたユーザーを魅了しました。
「新型RAV4に採用した4WDシステムを活かすような悪路走破性を日常生活で使うことはありませんが、性能として持っていることは、このRAV4では大切でした。性能に裏打ちされた雰囲気というのか。アウトドア用ウォッチなどと一緒です。
北米、ロシア、中国、そして日本のどの市場においても、アドベンチャーは全体の10%以上の割合となっています。これは、コンセプトが受け入れられている証なのではないでしょうか」と、前出の開発スタッフは語ります。
RAV4はよく、C-HRのシェアを奪ったといわれますが、実際は違うようです。都会にフィットし、高いオンロード性能を持ったC-HRに、RAV4ユーザーはそもそも興味を示していないというのです。
「販売の現場でよく聞くのは、RAV4を買いに来られたお客さまは、C-HRの前を素通りするということです。もちろんサイズも違うのですが、それ以前に雰囲気が真逆なのです。RAV4を求めるお客さまは、このオフロードの雰囲気に惹かれて購入を決める人が多いのだと思います」(前出の開発者)
北米でRAV4が先行デビューして以降、少なくとも日本のSUV市場では「オフロードルック」というのがトレンドになっています。かつては、いかにオンロードを快適に走るかというのがSUVの命題でしたが、もはやそこは通過して、もう一度原点回帰しよう、という源流が確かに存在しています。
今後もこのような流れがSUV全体に波及するかについて、前出の開発者は次のように話します。
「SUVは下火になりつつあるといわれますが、弊社の中期的な見通しでは、まだまだ成長市場であると考えます。そんななで、これまでに以上に悪路で本格的な性能を発揮するということが、ユーザーにとって大切な判断基準になっていると思います。
日本でもそうですが、昨今の気候変動によって大雨や大雪といったシーンが頻繁となり、それに対応できる性能、そしてそれを顕すデザインに期待して購入される人も増えているのではないでしょうか。
もちろんトヨタにはいろいろなSUVモデルがラインナップとしてあるので、すべてとはいいませんが、ヘビーデューティな道具のような雰囲気が他モデルにも広がっていく可能性はあると思います」
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かつてライトクロカンというコンセプトで都市型SUVのカタチを提案したRAV4は、いまマルチパーパスというカタチを昇華させました。追従するライバル車たちが、この方向性をどう吸収して新しいカタチを提案してくるのか。ますますSUVの世界が楽しみです。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。



































