トヨタ「カローラ」はオジサン車から脱却!? スポーティになった新型が若者ウケを狙う理由

累計生産台数4750万台という偉大な歴史を誇るカローラ

 カローラが若返ったふたつめの理由は、その歴史の偉大さにあるでしょう。カローラはあまりに偉大すぎて、簡単に販売終了させるわけにはいかないモデルになりました。

新型「カローラ/カローラツーリング」の室内
新型「カローラ/カローラツーリング」の室内

 1966年に発売された初代モデル以来、33年間も年間販売台数ナンバー1を守り、累計生産台数は4750万台を突破。この数字はトヨタ創業約80年の歴史で、過去に販売したトヨタ車のうち、約5台に1台がカローラだったということになります。

 現在の巨大なトヨタの礎を築いたのがカローラであり、その存在がなければ、いまのトヨタの姿も違ったものになったはずです。

 そのようなクルマを、「売れなくなったので、やめましょう」とは、なかなかいえるものではありません。

 さらにいえば、日本にはカローラ店という存在があります。販売会社の社名が、そのものずばりカローラです。

 以前カローラの誕生50周年イベントを取材したことがありますが、そのときの販売会社は、「まだまだカローラをたくさん売る」というやる気満々の様子でした。

「カローラを長く、たくさん売りたい」、その結果として新型カローラが若返りを図ったということでしょう。

 とはいえ、旧来の高齢なユーザーが、若々しく生まれ変わった新型カローラを購入するのかという問題がありますが、これに対するトヨタの答えが、旧型となった「カローラアクシオ/フィールダー」の併売です。

 また、ボディサイズが大きくなったとはいえ、新型カローラの全幅は1745mm。これは現在のベストセラーカーである「プリウス」の1760mmよりも小さいです。

 国内で販売される新型カローラは、世界市場向けと同じスポーティなデザインとなっていますが、じつは今回もボディは日本専用設計です。ドアミラーを畳んだときのサイズ拡大は、片側5mmに抑えられています。最小回転半径も先代モデルと同等の5mを確保しました。

 ドアの内装の厚みを薄くして乗り降りしやすくするなど、使いやすさには最大限に配慮されています。

 また、カローラは法人顧客が多く、カローラアクシオで約7割、カローラフィールダーで約6割も占めています。そうした法人顧客は、若々しいデザインに文句をいうことはないはずです。

※ ※ ※

 ハッチバック、セダン、ワゴン、旧型という具合にワイドバリエーションになるのは、長いカローラの歴史からすれば珍しい話ではありません。

 かつては、セダン、クーペ、ハードトップ、リフトバックが併売されていた時代もありました。ハッチバックもあるし、「カローラスパシオ」の名で背の高いハイトモデルも存在していました。商用は「カローラ・バン」として別系統になっており、現在の「プロボックス」に続いています。

 さらにいえば、販売会社の異なる「カローラスプリンター」も存在していました。カローラのクーペであった「レビン」には、デザインを変えた「トレノ」という兄弟車もあったのです。スポーツカーの「86」も、ルーツはカローラでした。

 そんな歴史を鑑みれば、シリーズ内に若々しい「カローラスポーツ」があり、一方で落ち着いた雰囲気の旧型のカローラが併売されていてもおかしくはありません。

 偉大なカローラの歴史を終えることは許されす、そのためにも若返りは当然のことだといえるでしょう。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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