【車両盗難】人気の個人間カーシェアが危ない? 堂々と簡単に盗難可能な実態とは
個人間でクルマを貸し借りする「個人間カーシェア」の普及が進んでいますが、この仕組みを悪用した車両盗難が大阪で発生しました。これは一体どのような手口なのでしょうか。
個人間カーシェアが標的となる新たな車両盗難の手口とは?
2019年4月、米国のシカゴでメルセデス・ベンツやBMWなどのカーシェア車両が100台以上盗まれました。手口はハッキングです。
これは、カーシェアとして車両を借りたときに情報を盗み、何食わぬ顔してエンジン掛けて乗り逃げるという手口です。
日本でもカーシェア車両の盗難事件が起きているというウワサはあったものの、いままで認知された本格的な盗難は筆者(国沢光宏)が知る限り1件のみでした。
「本格的な盗難」とは、名義変更まで含むケースです。カーシェア車両を借りたまま返却しないという事案であれば、レンタカーでも多数発生しています。
ただ名義変更までおこなうとなれば、書類(印鑑証明)が必要になります。カーシェアしたクルマの名義変更をおこなうのは、軽自動車を除いて難しいと思われます。
そんななか、共同通信は「大阪でカーシェアの車両が無断売却された」と伝えました。
大阪府警では、複数の無断返却の被害届けを受け(記事によれば相次いでいると書かれているため少なくない?)、詐欺の疑いで捜査しているといいます。果たして、無断売却など出来るのでしょか。
もし名義変更をともなうのなら、基本的に無理でしょう。前述の通り、印鑑証明が無いと名義変更ができません。そして第三者が印鑑証明を取得するのも難しいです。
それなら売却などできないのではないでしょうか。ところが、残念ながら「できる」と考えられます。
もちろん日本国内で名義変更など無理だし、正規の手段での輸出だって難しいです。ただし、廃車や部品取り車としてなら、書類無しでも日本から運び出せるルートが存在します。
もっともオーソドックスな方法は、車体を半分に切って別個に持ち出し、現地で繋げるというものです。ただしその場合「乗り逃げ」という証拠が残ってしまいます。
カーシェアの会員になる際、免許証など身元確認をされます。クルマを乗り逃げして、ましてや売却などしたら、当然のごとく追及されます。
これをクリアするもっとも簡単な方法は、キーの複製です。最近「コードグラバー」という、スマートキーを複製するための機器が出回っています。
個人カーシェアは、スマートキーを第三者に渡します。そのキーを借りている間に複製。クルマを返却し、しばらく時間が経過した頃合いに、複製したキーを使って普通にエンジン掛けて乗っていけばよいのです。
クルマはリレーアタックで盗んだときと同じく、輸出して換金します。街中でおこなわれているリレーアタックやコードグラバー使った盗難より、ずっと簡単だといえます。
また今回発生した事案では、偽造された免許証が使われたと報じられています。これだとクルマを持っていかれてそのまんまです。
偽造の免許証でカーシェア会員になれるなら、もはや無くなったクルマを追いかけることすら出来なくなってしまいます。
いずれにしろ個人間カーシェアは、こういったリスクを考える必要があります。十分注意して欲しいです。
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。
無断返却って返すのにも何か許可か手続きが必要なのか