かつてのマツダ車大幅値引きはどうなった? 商品力が向上した今も「マツダ地獄」は続いている?

かつてのマツダ車は、新車購入時に大幅に値引きされ、そのぶん下取り査定額も下がり、他社より高く買い取ってくれるマツダのディーラーでしか売却ができずにまたマツダ車に乗り続けるということがありました。「マツダ地獄」という言葉が生まれましたが、スカイアクティブ技術や魂動デザインを取り入れてマツダ車の魅力が上がったいまでは、どうなっているのでしょうか。

以前のマツダは大幅に値引きして販売していた

 かつて、「マツダ地獄」というイヤな言葉がありました。マツダは大幅な値引き販売をする代償として、数年後の売却額が大幅に下がり、相応の金額で買い取るマツダのディーラーでしか下取りしてもらえず、またマツダのクルマを乗り継ぐことになる、という意味です。

 一度マツダ車を買うと、買い叩くほかのメーカーにはもはや移れないので、「マツダ地獄」という言葉が生まれました。

スタイリッシュになった「マツダ2(デミオ後継)」
スタイリッシュになった「マツダ2(デミオ後継)」

 筆者(渡辺陽一郎)は、「カーライフに地獄はない」と考えているので、この言葉は使いませんが、以前のマツダ車の売却額が安かったのは確かです。なぜ、マツダ車を売るときは、安い金額でしか売れなかったのでしょうか。

 まず冒頭でも述べた多額の値引き販売です。たとえば生産を終えた「プレマシー20C」の価格は約200万円でしたが、40万円以上も値引きして、150万円台の後半で売っていたことがあります。同様に先代「アテンザセダン25EX」の価格は250万円でしたが、50万円以上の値引きをして190万円台後半で販売していました。

 このような売り方をすれば、数年後に売却するときの査定額が下がって当然です。大幅値引きで購入して、高値で手放せるクルマはあるはずもなく、極端な値引き販売がマツダ車の売却額を下げました。

 いいかえれば、当時のマツダディーラーは薄利多売だったため、多額の値引きで売り、なおかつマツダのディーラーだけは、その車両をユーザーが納得する金額で買い取っていたというわけです。

 マツダ車の売却額が下がったほかの理由として、主にデザインに基づくクルマのイメージがあげられます。マツダが多系列の販売戦略で失敗した1990年代中盤から、魂動デザインが生まれる2012年までのセダン、ワゴン、ハッチバックは、外観が地味でした。

 運転すると良いクルマでも、見栄えが冴えないと人気は高まりません。そこでディーラーが大幅値引きで叩き売るというイメージができました。

 販売店で商談していても、値引きの話になると、セールスマンが「値引きなら絶対に他社に負けません」と膝を乗り出します。値引きの上乗せは嬉しいですが、安売り感も強まりました。

 ただしすべてのマツダ車が、安売りをして売却時の金額を下げていたわけではありません。「ロードスター」や「RX-7」「RX-8」のようなスポーツモデルは人気が高く、今でも中古車が高値で取り引きされており、売却額も高いです。

 もともとマツダは、ロータリーエンジンに代表されるスポーティなクルマのビジネスは得意で、セダンやハッチバックには不器用な印象がありました。

 マツダはこの状況を打破したいと考えていました。多額の値引き販売では儲からず、優れた商品を開発しても、安売りのイメージが邪魔をして新規の顧客を呼び込めないからです。

 そこでマツダは、スカイアクティブ技術の名称でエンジンからプラットフォームまで新規に開発して、同時に外観も「魂動デザイン」を採用して刷新しました。

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