スバルは「スバル360」以前にクルマを作っていた!? スバルの「初モノ」5選

スバルといえば水平対向エンジンにAWDというのが真っ先に浮かびますが、初めて採用されたモデルはどんなクルマだったのでしょうか。スバルの歴代車のなかから「初」となる記念的なモデルを5車種ピックアップして紹介します。

スバルの「初モノ」はどんなクルマ?

 スバルの原点は、1917年に創設された中島飛行機までさかのぼります。第二次大戦前から航空機を製造し、戦後に中島飛行機が解体されると1945年に富士産業と改称し、平和産業への転換が図られました。

市販されなかった幻のスバル車「P-1」
市販されなかった幻のスバル車「P-1」

 当初はスクーターの製造から始まり、1953年には富士重工業が誕生。クルマの製造を開始して2017年に社名を「株式会社SUBARU」に変更していまに至ります。

 戦前まで含めると100年以上もの歴史を持つスバルですが、その過程でスバルにとって「初」となる技術が幾度も誕生しました。

 そこで、スバルがこれまで生産してきたクルマのなかから、「初」となる記念すべきモデル5車種を紹介します。なお、以降は社名(ブランド名)を「スバル」で統一します。

●初の四輪自動車「P-1」

 スクーターやバスのボディなどを製造してきたスバルは、何台かの試作車を経て1955年に初の四輪自動車である「P-1」を完成させ「すばる」と命名します。

 P-1は4ドアセダンのボディに1.5リッターの直列4気筒OHVエンジンを搭載。最高出力は55馬力を誇りました。

 ボディのデザインはアメリカ車とイギリス車両方のエッセンスを持ち、当時として画期的だったのが国産乗用車で重視されていなかった「乗り心地」と「走行安定性」を追求していたことでした。

 P-1は20台作られましたが一般ユーザーには販売されず、14台は社内のテスト用に、残りの6台は群馬県内のタクシー会社に販売され、1年間事業用車として走行テストがおこなわれました。

 1950年代は庶民にとってマイカーを持つのはまだ夢で、タクシー会社が自動車メーカーにとってのお得意さんであり、クルマの耐久性などのテストをおこなうにはうってつけでした。

 このテストの結果、乗り心地の良さと、ボディ、足廻りなどの耐久性は内外のどんなクルマにもまさっていたといいます。P-1の量産化は当時の市場、そのほかの事情から見送られましたが「スバル360」の開発に大きく貢献することになりました。

●初の量産車「スバル360」

 前出のP-1完成から3年後の1958年、スバルブランドの起源となる軽自動車「スバル360」が発売されました。

 スバル360は、当時の通産省が提示した「国民車構想」に則って開発され、マイカーを持つことを夢から現実に変えた日本の自動車史に燦然と輝くクルマです。

 全長2990mm×全幅1300mm×全高1380mmのボディは、航空機製造で培った技術によるモノコック・シャシが採用され、車重は385kgに抑えられました。

 わずか16馬力の空冷2気筒2サイクルエンジンながら、大人4人乗車でも最高速度は83km/hに達し、乗り心地や操縦安定性も、当時の小型車と比べて遜色なかったといいます。

 スバル360は、そのスタイルから「てんとう虫」の愛称で呼ばれ、発売以降12年間販売されたロングセラーとなり、多くのユーザーに愛されました。

●初の水平対向エンジン搭載車「スバル1000」

 現在、スバル車のエンジンといえば水平対向のみで(OEM車を除く)、世界的に見ても四輪自動車用はポルシェとスバルだけが量産しています。

 この水平対向エンジンを初めて搭載したのが、1966年に発売されたFF車「スバル1000」です。

 スバル1000のボディは当初4ドアセダンのみで、全長3930mm×全幅1480mm×全高1390mmとコンパクトなサイズながらもFFの利点で室内は十分な広さを確保。モノコック・シャシを採用し、車重はわずか695kgと軽量化を実現していました。

 エンジンは1リッター水平対向4気筒OHVで、最高出力55馬力とスペック的には平凡でしたが、水平対向エンジンということで低振動かつ低重心化でき、乗り心地と走行性能を向上。

 また、四輪独立懸架の採用や、フロントブレーキをホイール内ではなくエンジン側に配置したインボードブレーキとするなど、先進的な技術が盛り込まれていました。

●初の四輪駆動車「スバルff-1・1300Gバン4WD」

 スバルのクルマの特徴というと、水平対向エンジンに加え、豊富な四輪駆動車(以下4WD)のラインナップということが挙げられます。

 この4WDが初めて採用されたのが「スバルff-1・1300Gバン4WD」でした。

 スバルff-1・1300Gバン4WDは1971年に製作されましたが、誕生の経緯としては、東北電力から冬場の豪雪地帯での設備保守用に、乗用車タイプの4WD車が必要というリクエストによるものでした。

 そこで、スバルは1300Gバンをベースに4WD化する改造をおこない、いまにつづく「シンメトリカルAWD」を初めて実現させました。

 スバルff-1・1300Gバン4WDは8台製作されて、そのうち5台が東北電力に納められ、実際に現場で活躍したといいます。なお、現存するのはスバルの「ビジターセンター」にある1台のみのようです。

●ふたつの『初』があった「アルシオーネ」

 1985年に発売された2ドアクーペのスペシャルティカー「アルシオーネ」は、スバル初で唯一のリトラクタブルヘッドライトを採用したモデルです。

 外観はまさに「クサビ型」という形容がぴったりな未来的なフォルムで、空気抵抗を極限まで抑えたデザインとなっていました。

 実際に空気抵抗を推し量るCD値(空気抵抗係)は0.29と、国産車で初めて0.3を下回る値を実現。

 内装のデザインも外観と同様に個性的で、ダッシュボードやハンドル周りは、まるで飛行機のコクピットをイメージさせる作りでした。

 初期のモデルでは1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンのみで、FFと4WDがありましたが、後に2.7リッターの水平対向6気筒自然吸気エンジンも追加。

 また、グレードによっては自動で車高を調整できるエアサスペンションが採用されるなど、見た目だけでなくメカニズムも先進的なクルマでしたが、販売面では苦戦し、記録よりも記憶に残る1台でした。

※ ※ ※

 スバルはクルマの製造ではそれほど長い歴史はありませんが、いまの「アイサイト」やCVTなど、革新的な技術をいくつも生み出してきた会社です。

 現在のスバルは「シンメトリカルAWD」を前面に押し出し、国内外でスバルブランドの代名詞にもなっていますが、新しいものを作り出すとともに、過去の技術を育て継承してきたブレない姿勢が、スバルの強みではないでしょうか。

幻のクルマ「P-1」などスバルの『初モノ』を画像でチェック(12枚)

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