人気軽自動車なぜ共同開発? 日産と三菱の業務提携が成功した理由とは
さまざまな苦労を乗り越えた日産と三菱
今回の新型軽自動車の開発には、言葉の面においても苦労したようです。前出の開発者は次のように話します。
「頻繁に使うのは日本語ですが、日産と三菱では、同じ言葉でも意味や示している範囲が微妙に違います。そうなると話が通じなかったり、誤解を招く原因になるので、用語の統一を図りました」
つまり同じ日本メーカーの日産と三菱の間にも「言葉の壁」があったわけです。
その一方で、日産が三菱に助けられた部分もありました。軽自動車はクルマのなかでも特殊な商品で、全長は3395mm、全幅は1475mmで造られています。
コストも低減しなければならず、そのためには生産するときの工程を少なく抑えることも求められます。こういった軽自動車特有のノウハウは、日産よりも三菱が豊富でした。長年にわたって軽自動車の開発と生産を続けてきたからです。
そして前出の開発者は「日産がデイズとeKシリーズを開発して三菱が生産するためには、(日産と三菱の合弁会社となる)NMKVが不可欠の存在でした」とコメントしています。
先に述べた通り、日産が開発して三菱が生産するには数多くの障壁があり、それを乗り越えて両社を結び付けたのがNMKVでした。
例えば日産の開発の仕方を、生産を受け持つ三菱の水島製作所に説明するなど、NMKVは偏りのない中立的な立場で両社の意思疎通をサポートしています。
NMKVは、先代デイズ&eKシリーズ、デイズルークス&eKスペースも担当していますが、その存在価値は、新型デイズ&eKシリーズで飛躍的に発揮されました。NMKVあっての新型デイズ&eKシリーズといえるでしょう。
合弁会社を活用すると、複数の企業の得意分野を協調して生かすことができます。その意味でNMKVは、合弁会社が成功した注目すべきパターンのひとつです。
とくに近年の日産と三菱は、日本国内では新型車の発売が滞りがちでした。NMKVを活用して、日本のユーザーに適した魅力的な軽自動車やコンパクトカーを積極的に投入して欲しいものです。
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【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
握手しているお二人の肩書が違います。だから、成功した?(日産側が少し失礼?)
ダイムラー・クライスラーのような時は、クライスラーにそこまでの危機感がなかったから、失敗?