クルマの小傷が自然に直る!? トヨタや日産が採用する“夢の塗装”のメリット・デメリット

クルマについた小傷が自然に直る夢のような塗装が各社で採用されています。日産が「エクストレイル」などに取り入れている「スクラッチシールド」やレクサス・トヨタの「セルフリストアリングコート」と呼ばれる塗装ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

小傷が自然で直るスクラッチシールドって何?

 愛車をいつまでも綺麗に保ちたいと思っている人にとって大敵なのが、ボディの傷でしょう。とくに洗車のときに付いてしまう「洗車傷」はとても悩ましいもので、綺麗にしたいけれど傷が増えてしまうというジレンマに苛まれている人も多いのではないでしょうか。

ここまで深い傷は自然には治らないが…

 そんなユーザーの強い味方なのが、日産車の一部の車種に採用されている洗車キズやひっかきキズなどが自然に復元する性質を持つ「スクラッチシールド」です。

 通常、ボディの塗装には仕上げ用にクリア塗装が施されていますが、スクラッチシールドはこのクリア塗装に軟質樹脂を配合したものを採用しています。特殊高弾性樹脂を配合して柔軟性を向上させ、樹脂の結合密度を高くすることで強靱性を高めており、洗車などでついてしまった傷がその柔軟性によって復元するといった仕組みになっているのです。

 簡単にいえば、低反発クッションを押し込んだときにジワジワと元の状態に戻るようなイメージです。

 そうはいっても、クリア塗装面が破断したり削り取られたりするほどの傷には当然効果はありません。低反発クッションも切ったりちぎったりすれば元に戻らないとですから。

 傷の復元には塗料の弾性を利用しているため、気温が低いと復元が遅くなる傾向にあります。

 日産ではスクラッチシールドについて次のように説明します。

「傷の復元は、場合によっては1週間程度かかることもあります。そんなときは日当たりの良い場所に駐車しておくか、お湯をかけると復元が早まります」

日産やトヨタ・レクサスで採用されている

 スクラッチシールドは、もともとは初代「エクストレイル」の後期型に採用された「スクラッチガードコート」を進化させたもので、2代目エクストレイルに初採用されました。

小傷が自動修復する「スクラッチシールド」塗装が施された日産「エクストレイル」

 当初は黒や紺、赤といった磨き傷が目立ちやすいボディカラーに採用されていましたが、現在は車種によっては全ボディカラーがスクラッチシールド塗装となっているものも存在しています。

 また、スクラッチシールド塗装はクルマだけでなく、携帯電話やオーディオスピーカーにもライセンス提供がなされており、自動車以外の分野にも採用例があるのです。

 なお、トヨタにも「セルフリストアリングコート」と呼ばれる同様の性質をもったものが用意され、レクサス「LS」やトヨタ「センチュリー」といった高級モデルから、「ノア」「ヴォクシー」などのミニバンにまで広く採用されています。

スクラッチシールドのメリット・デメリットとは?

 いいことずくめのスクラッチシールドですが、メリットもあればデメリットも存在します。メリットはもちろん傷が付きにくくなることに加え、水弾き性能も向上したことで水垢などの付着も抑えてくれるので、新車時の塗装の状態が長く続くということです。

 一方のデメリットは、万が一事故などで再塗装が必要となったときの修理代が高額となってしまうことです。

 特殊なクリア塗料を使っていることももちろんですが、焼付塗装を複数回行うなど塗装工程も一般の塗料とは異なっているので、それだけコストが上がってしまうのです。

 また、その効果も無限ではなく、公式には3年から5年が耐用年数となっている点にも注意が必要でしょう。

 とはいえ、耐用年数が経過した後も突然効果がなくなるわけではないので、通常の塗装の車両に比べれば綺麗な状態を維持しやすいというメリットも存在します。

 末永く愛車を綺麗に保ちたい人にとっては、やはりスクラッチガードはメリットの方が大きいといえるかもしれません。

【了】

小傷が自動修復する塗装はレクサス「LS」やトヨタ「センチュリー」にも採用されている(5枚)

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Writer: 小鮒康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。

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